イエスの誕生に続く東方の賢者たちの訪問を読みます。マタイによる福音書の第2章からです。
By James Tissot – Online Collection of Brooklyn Museum; Photo: Brooklyn Museum, 2006, 00.159.30_PS1.jpg, Public Domain, Link
Τοῦ δὲ Ἰησοῦ γεννηθέντος ἐν Βηθλέεμ τῆς Ἰουδαίας ἐν ἡμέραις Ἡρῴδου τοῦ βασιλέως, ἰδοὺ μάγοι ἀπὸ ἀνατολῶν παρεγένοντο εἰς Ἱεροσόλυμα (Mt 2:1)
Cum ergo natus esset Iesus in Bethleem Iudaeae in diebus Herodis regis, ecce Magi ab oriente venerunt Hierosolymam
ところでイエスがヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムで生まれた時、見なさい、賢者たちが日の出の地からイェルサレムにやって来た
最初は絶対属格から始まります。主語はἸησοῦς「イエス」の属格 Ἰησοῦ、動詞はγεννάω「産む」のアオリスト受動分詞の属格男性単数で「生まれた」と訳します。絶対属格はここでは時間を表しますので τοῦ δὲ Ἰησοῦ γεννηθέντοςは「イエスが生まれた時」と訳します。
前置詞ἐν + 与格が二度出てきますが最初は場所を表し、次は時間を表します。ἐν Βηθλέεμは「ベツレヘムにおいて」でこれに属格 τῆς Ἰουδαίας「ユダヤの」が掛かります。次の ἐν ἡμέραιςは「日々において」、これに属格 Ἡρῴδου τοῦ βασιλέως「ヘロデ王の」が掛かります。このヘロデ王は彼らもまた統治者である彼の子供たちと区別するために「ヘロデ大王」と呼ばれています。
ラテン語では絶対構文ではなく接続詞 cum「〜の時」を使って従属節を作っています。
ἰδούはεἶδον「見る」のアオリストの命令ですが間投詞として「ほら」というような意味で使われます。ラテン語のecceは動詞由来でない間投詞で「ほら」「見なさい」という意味です。フランス語LSではvoici、英語KJVではbeholdがよく使われます。
主節の主語 μάγοιはμάγοςの複数でもとは「ゾロアスター教の僧侶」ですが一般的に「賢者」を意味します。後になってこの言葉が独り歩きしてmagic「魔法」となります。日本語でもマギという言葉が使われますがこれはラテン語のmagiから来たものでmagusの複数形です。このため一人の場合は「一人のマギ」ではなく「一人のマグス」と本来はするべきです。
ἀπο + 属格で出処を表します。ἀνατολῶνは ἀνατολή「東」「日の出」の属格複数です。複数であることから賢者たちはもともと一緒にいたわけではなく東の各地から集まってきたように読めます。一方ラテン語のab orienteは単数で、単に「東から」を意味していますので、あまりこだわらないほうがいいかもしれません。
動詞はπαραγίγνομαι「近くに現れる」のアオリストです。εἰς + 対格で「〜のなかに」を表しここでは格変化しない地名Ἱεροσόλυμα「イェルサレム」が続きます。
一般的には賢者は三人と表現されますが、マタイによる福音書には複数であることはわかるものの人数の記述はありません。