受胎告知(1)天使ガブリエルの登場


受胎告知とは天使ガブリエルが聖母マリアに受胎とイエスの誕生を知らせる出来事です。フランス語では大文字から始まるl’Annonciation、英語でもthe Annunciationといいます。ルカによる福音書に記述があります。

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Ἐν δὲ τῷ μηνὶ τῷ ἕκτῳ ἀπεστάλη ὁ ἄγγελος Γαβριὴλ ἀπὸ τοῦ θεοῦ εἰς πόλιν τῆς Γαλιλαίας ᾗ ὄνομα Ναζαρὲθ (Lc 1:26)

in mense autem sexto missus est angelus Gabrihel a Deo in civitatem Galilaeae, cui nomen Nazareth

ところでその六ヶ月目のこと天使ガブリエルが神によって遣わされた、ナザレトという名のガリラヤの町へ。

ἐν + 与格で出来事の発生した時間を指します。ここでは男性名詞 μείς「月」の与格 μηνίとそれに同格で τῷ ἕκτῳ「六番目」が続きます。ラテン語ではin + 奪格で表現されます。この節の前でエリザベトの受胎、これによって洗礼者ヨハネが誕生することになる告知が夫の祭司ザカリアにされていました。その六ヶ月目という流れになっています。

主語は ὁ ἄγγελος Γαβριὴλ 「天使ガブリエル」、ἀπεστάληは動詞 ἀποστέλλω「送る」のアオリスト受動態で「送られた」「遣わされた」の意味になります。その動作主はἀπό + 属格で ἀπὸ τοῦ θεοῦで「神によって」となります。ラテン語も同じ構造になっていてangelus Gabrihel「天使ガブリエル」が完了形受動態 missus est「遣わされた」a Deo「神によって」となります。ラテン語の場合、動作主は前置詞 a + 奪格で表現されます。

εἰς πόλιν「町の中へ」には属格 τῆς Γαλιλαίας「ガリラヤの」で説明があります。さらにπόλινを先行詞として関係節 ᾗ ὄνομα Ναζαρὲθ 「ナザレトという名前の」が続きます。関係節には動詞がありませんがεἰμί の変化形ἐστίν「である」が省略されていると思われます。ラテン語の in civitatem Galilaeae cui nomen Nazarethも同じ構造です。

εἰς + 対格、in + 対格は方向を表し「〜の中へ」という意味になります。

日本語ではこの町の名前をナザレと表記されることが多いのですが Ναζαρὲθ / Nazarethの最期のθまたはthの音を残しておきたいのでナザレトと表記しました。古典古代のころは強めだされる母音を伴わないトでしたが、新約の時代のコイネーでは英語のthと同じトゥとスの間のような音になります。

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