受胎告知(2)聖母マリアの登場


前節の天使ガブリエルが遣わされた先についての説明があります。

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πρὸς παρθένον ἐμνηστευμένην ἀνδρὶ ᾧ ὄνομα Ἰωσὴφ ἐξ οἴκου Δαυὶδ, καὶ τὸ ὄνομα τῆς παρθένου Μαριάμ. (Lc 1:27)

ad virginem desponsatam viro, cui nomen erat Ioseph de domo David et nomen virginis Maria.

若い未婚女性のところへ、彼女はある男と婚約していてその男の名前はヨセフといいダヴィデの家の出身である、そしてこの若い未婚女性の名前はマリアという。

この節は前節からつながっていて前節ὁ ἄγγελος Γαβριὴλ ἀπεστάλη εἰς πόλιν「天使ガブリエルが町に遣わされた」の後に πρὸς παρθένον「若い女性に向かって」が続いています。ἐμνηστευμένηνは μνηστεύω「婚約する」の完了分詞で若い女性を修飾しています。さらに婚約している相手は与格 ἀνδρὶ「男」で、これを先行詞とした関係節で ᾧ ὄνομα Ἰωσὴφ「彼に対する名前はヨセフ」とあります。ここにも動詞が抜けているので現在 ἐστίν「〜である」か未完了 ἦν「〜であった」を補完して訳します。

ここで使われるπαρθένοςという単語ですが「処女」「若い娘」「未婚女性』「ギリシア神アテナの像」「乙女座」「目の瞳孔」「怖がりの男」という意味が辞書にはあります。ここでは最初の3つのどれか、あるいは全部の意味を持っていると思われます。ちなみにアテネにあるパルテノン神殿もこの単語が複数属格Παρθενών で使われています。ラテン語のvirginemはvirgoの対格で「処女」「若い娘」「未婚女性』「乙女座」の意味があります。

ᾧ ὄνομα Ἰωσὴφ「彼に対する名前はヨセフである」は関係節で関係代名詞 ᾧは与格です。これに対し τὸ ὄνομα τῆς παρθένου Μαριάμ「その若い未婚女性の名前はマリアである」と言うときのτῆς παρθένου 「その高い未婚女性の」は属格です。このように所有を表すときには与格と属格の二通りがあります。ラテン語も同様でcuiは与格の関係代名詞でvirginisはvirgoの属格です。

マリアはギリシア語でΜαριάμと書かれマリアムという音になります。これはユダヤ文化圏での音を転写したもののようでラテン語ではMariaと最期のmは脱落しています。

ヨセフには ἐξ οἴκου Δαυὶδ「ダヴィデ家の出身」が添えられています。これはヨセフが正統な血筋を持っているということを表現していると考えられます。

ここに至る前に洗礼者ヨハネに関する受胎告知については祭司ザカリア、つまり夫のところに天使ガブリエルは現れました。しかしイエスの場合は夫ヨセフではなく妊娠する本人マリアのところに現れています。

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