マリアと神とのつながりを強調する天使ガブリエルは語り続けます。
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καὶ ἰδοὺ συλλήμψῃ ἐν γαστρὶ καὶ τέξῃ υἱὸν. καὶ καλέσεις τὸ ὄνομα αὐτοῦ Ἰησοῦν. (Lc 1:31)
Et ecce concipies in utero et paries filium et vocabis nomen eius Iesum.
そして見なさい、あなたはその子宮に子を授かり、男の子を産むだろう。そしてその子の名前をあなたはイエスと呼ぶであろう。
ἰδού、ecceは注意をうながす間投詞です。ἰδούがεἶδον「見る」の命令であるため「見よ」「見なさい」との訳になってますが間投詞的な表現だと「ほら」でもいいかもしれません。
この節には3つの動詞συλλήμψῃ、τέξῃ、καλέσεις がありすべて二人称単数の未来時制になっています。ラテン語のconcipies、paries、vocabisも同様です。
συλλήμψῃはσυλλαμβάνωの未来中動態です。通常はσυλλήψῃとψの前にμがない変化が一般的ですがコイネー独特のものかもしれません。 συλλαμβάνωはσυν-「一緒に」とλαμβάνω「取る」の複合語で「子を授かる」の他に「集める」「自分の元に受け取る」などの意味があります。このようにいろいろな意味があるため「受胎」の意味にするため ἐν γαστρὶ「子宮に」という言葉が添えられたのだと思われます。γαστρίはγαστήρの与格で「子宮」の他に「腹全般」「胃」の意味があります。英語のgasterは消化器官を指す言葉となり「子宮」の意味は消失しています。
τέξῃはτίκτω「産む」の未来中動態です。υἱὸνはυἱός「息子」の対格ですが日本語的には「息子を産む」というより「男の子を産む」といったほうが自然です。
καλέσειςはκαλέω「呼ぶ」の未来能動態です。この動詞は2つの対格を目的語に取り「AをBと呼ぶ」という意味になります。Aにあたるものは τὸ ὄνομα αὐτοῦ「彼の名前」でBにあたるものは Ἰησοῦν「イエス」です。ラテン語のvocabis nomen eius Iesumもまったく同じ構造になっています。ギリシア語とラテン語では固有名詞でも格変化をするので原形となる主格はἸησοῦςとIesusです。
この節は天使ガブリエルの語りの途中で鍵括弧は開いたままになっています。
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