マリアの妊娠から始まり生まれてくる息子の行いへと天使ガブリエルの語りは続きます。
By Guido Reni – From book (see down), Public Domain, Link
καὶ βασιλεύσει ἐπὶ τὸν οἶκον Ἰακὼβ εἰς τοὺς αἰῶνας, καὶ τῆς βασιλείας αὐτοῦ οὐκ ἔσται τέλος. (Lc 1:33)
et regnabit super domum Iacob in aeternum, et regni eius non erit finis ».
そして彼はヤコブの家の上に永遠に君臨するだろう、そして彼の王国の終わりは存在し得ないであろう。」
βασιλεύσειはβασιλεύω「支配する」の未来です。この単語はβασιλεύς「王」やβασιλεία「王国」などと同じ由来です。ἐπί + 対格で「〜の上へ」の意味になりますが日本語では「支配する」と組み合わせにくい表現です。彼の王権がヤコブの一族を上から覆っているイメージなのでしょう、ここでは「〜の上に君臨する」と訳しました。ラテン語のregnabit super domumはその直訳になっています。
ラテン語ではsuper domumの代わりに in domo「家の中において」という版もあるようです。前置詞 ἐπί は対格の他に属格と与格を取ることができそれによって意味も変わってきます。仮に ἐπί + 属格であれば「〜の中で」の意味となりin domoの方が適切になってきますがギリシア語でそのような版は見つかりませんでした。
αἰῶναςはαἰώνの対格複数です。αἰώνは単数で「世代」「一生」の意味ですが複数だと「何世代もの間」、転じて「とても長い間」、「永遠」という意味になります。ラテン語の aeternumはaeternusの単数対格ですがaeternusがそのまま「永遠」を意味します。
τῆς βασιλείας「王国」は属格でτέλος「終わり」にかかります。ἔσταιも未来で否定のοὐκがあるので οὐκ ἔσται τέλος「終わりがあることはないであろう」という意味になります。ラテン語の non erit finisもこの直訳になっています。
今まで4節にわたった天使ガブリエルの語りはここで終わり、一旦鍵括弧を閉じます。語りの後半は未来形の動詞が連続していて預言のようですが、子の名前をイエスと呼ぶ下りなどはマリアに対する命令のようであったりもしました。