常識では考えられないことがなぜ起こるのかというマリアの問いに天使ガブリエルは答えます。
By Bartolomé Esteban Murillo – The Yorck Project: 10.000 Meisterwerke der Malerei. DVD-ROM, 2002. ISBN 3936122202. Distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH., Public Domain, Link
καὶ ἀποκριθεὶς ὁ ἄγγελος εἶπεν αὐτῇ, Πνεῦμα ἅγιον ἐπελεύσεται ἐπὶ σὲ, καὶ δύναμις ὑψίστου ἐπισκιάσει σοι· διὸ καὶ τὸ γεννώμενον ἅγιον κληθήσεται υἱὸς θεοῦ. (Lc 1:35)
Et respondens angelus dixit ei : « Spiritus Sanctus superveniet in te, et virtus Altissimi obumbrabit tibi: ideoque et quod nascetur sanctum, vocabitur Filius Dei.
そして天使は答えて彼女に言った、「精霊があなたの上にやって来て、最も高き者の力があなたの上から覆ってくるだろう:そのため生まれてくる聖なる者は神の息子と呼ばれるであろう。
ἀποκριθείςはἀποκρίνωのアオリスト中動分詞で ὁ ἄγγελος「天使」にかかります。ἀποκρίνωは中動態のときには「答える」という意味になり主動詞 εἶπεν「言った」と合わせて「答えている天使は言った」となりますが同語反復を避けて「答えて言った」と訳します。ラテン語の renpondensはrespondeo「答える」の現在能動分詞です。
πνεῦμαは「息」「霊」の意味で形容詞 ἅγιον「聖なる」と合わせて新約の文脈では「精霊」と訳されます。対応するラテン語のSpiritus Sanctusはこれで一つの熟語になっていて両方大文字始まりになっています。
動詞 ἐπελεύσεταιは ἐπέρχομαι「上に来る」の未来です。この動詞はἐπί「上に」とέρχομαι「来る」の複合語です。ラテン語のsupervenietも同様にsuperとvenietに分けることができます。来る先は ἐπὶ σὲで「あなたの上に」となります。σέ は対格です。
ὑψίστουはὕψιστος「最も高き者」の属格でこの表現は1:32に出ていました。δύναμιςは「力」を意味します。ラテン語ではvirtus Altissimi 、フランス語LSでは la puissance du Très Haut、英語KJVでは the power of the Highestと記述されています。
ἐπισκιάσειはἐπισκιάζωの未来で「覆うだろう」という意味になります。これもἐπί「上に」とσκιάζω「覆う」にわけられます。σκιάζωはσκιά「陰」「影」と同じ由来の言葉で「影を作る」という元の意味があります。さらにἐπίが加わるので「上の方を覆う」イメージになります。σοιは与格で「あなたに対して」の意味です。
διόは接続詞で「その理由で」と続き、主語は γεννώμενονはγεννάω「産む」の現在分詞の受動態、中性単数で「生まれてくる者」の意味です。ラテン語quod nascetur も同様に中性です。息子だとわかっているのであれば男性でよい気がしますが、ここでは中性になっています。理由は単に子供だからかもしれませんし、このような人知を超えた方法で世に現れる概念を指しているからかもしれません。
そしてその生まれてくるものは κληθήσεται υἱὸς θεοῦ「神の息子と呼ばれるだろう」とあります。これは(Lc 1:32)で天使ガブリエルが告知した υἱὸς ὑψίστου κληθήσεται「最も高き者の息子と呼ばれるだろう」とほぼおなじ内容です。