前節のまとめのような短い一文です。
福音記者ヨハネ By Domenichino – National Gallery, London, Public Domain, Link
οὗτος ἦν ἐν ἀρχῇ πρὸς τὸν θεόν. (Io 1:2)
Hoc erat in principio apud Deum.
それははじめに神のそばにあった。
主語はοὗτος「それ」です。男性単数なので前節の単数の男性名詞を指していますが、前節には2つの男性名詞が出てきました。λόγος「言葉」とθεός「神」です。前節は3つの主節で構成されていてその全てでλόγοςが主語になっていて、これが主題と考えれば常識的に前者だとわかります。実際後者にすると意味が通じなくなってしまいます。
他の言葉は前節ですでに同じ使われ方で出てきたので省略します。フランス語LSのavecや、英語KJVのwithはラテン語のapudから訳出されたものでギリシア語のπρόςではないだろうという指摘は前節でしました。
以下もう一度前節の言葉を抜粋して箇条書きにします。
- ἐν ἀρχῇ ἦν ὁ λόγος — はじめに言葉があった
- ὁ λόγος ἦν πρὸς τὸν θεόν — 言葉は神のそばにあった
- θεὸς ἦν ὁ λόγος — 言葉は神であった
ここで言えるのは前節で使われた表現を組み合わせて同じような意味の文を作っている点、そしてそれが一種の詩的な印象を与えているという点です。