賢者たちが訪問の意図を説明したあと、ヘロデ王とイェルサレムの反応が続きます。
ヘロデ王 By Unknown – https://thisblogisratedpgforpropheticguidance.files.wordpress.com/2013/11/herod.jpg, Public Domain, Link
ἀκούσας δὲ ὁ βασιλεὺς Ἡρῴδης ἐταράχθη καὶ πᾶσα Ἱεροσόλυμα μετ’ αὐτοῦ, (Mt 2:3)
Audiens autem Herodes rex turbatus est et omnis Hierosolyma cum illo;
しかしこれを聞いたヘロデ王は動揺した、そしてすべてのイェルサレムも彼の側にあった。
主語は ὁ βασιλεὺς Ἡρῴδης「ヘロデ王」、動詞はταράσσω「かき乱す」「動揺させる」のアオリスト受動態です。受動態なので「動揺させられた」の意味ですが「動揺した」としても良いでしょう。主語は同格でἀκούω「聞く」のアオリスト能動分詞 ἀκούσαςで修飾がされてます。聞いた内容は書かれていませんが前節の賢者たちの発言を指します。
καί「そして」のあと別な主語 πᾶσα Ἱεροσόλυμα「すべてのイェルサレム」が続きます。このἹεροσόλυμαは女性単数か忠誠複数の2つのケースがありますが、ここではπᾶσαがπᾶς「すべて」の主格女性単数ですから前者のケースです。μετά + 属格「〜と一緒に」にヘロデ王を意味する属格単数αὐτοῦ「彼」が続きます。
ラテン語のHierosolymaも中性複数と女性単数の二通りのケースがあります。
ここでは動詞がありません。考えられるのは二通り、一つ目は一般的に省略されるεἰμί「〜である」の変化形を補うケースです。ここでは前の動詞がアオリストであること、εἰμίにはアオリストがないため過去時制として利用できる未完了ἦνを使うことが考えられます。この場合「すべてのイェルサレムは彼とともにあった」と訳すことができます。
もう一つの方法は前半の動詞と同じ物が後半でも使われていると想定するケースでこの場合「すべてのイェルサレムは彼とともに動揺した」と訳すことができます。
ラテン語文はギリシア語文に忠実になっています。
ヘロデ王の動揺は身内に生まれたばかりの子がいないこと、そして賢者たちの見た星に思い当たるものがないことに由来しています。さらに彼は身内を何人も殺したことが知られていて、仮に親族の子がいても同じように動揺したかもしれません。
このヘロデ大王とも呼ばれるヘロデ王の築いたヘロデ朝は実質ローマの傀儡であり、古代ユダヤ最後の王朝です。ユダヤの人々にとっては先の見通しがしにくい中では、ちょっとした出来事にも動揺する下地はあったと考えられます。