東方の賢者たち(4)ヘロデ王の勉強会


ヘロデ王は動揺しているだけではありませんでした。

Herod the Great - Massacre of the Innocents - Chapel of Madonna and Child - Santa Maria della Scala - Siena 2016.jpg
By © José Luiz Bernardes Ribeiro / , CC 表示-継承 4.0, Link

καὶ συναγαγὼν πάντας τοὺς ἀρχιερεῖς καὶ γραμματεῖς τοῦ λαοῦ ἐπυνθάνετο παρ’ αὐτῶν ποῦ ὁ χριστὸς γεννᾶται (Mt 2:4)

et congregans omnes principes sacerdotum et scribas populi, sciscitabatur ab eis ubi Christus nasceretur.

そして彼はすべての祭司長と民間の律法学者を集めて彼らから聞き取っていた、どこにクリストスが生まれているのかを。

最初は分詞構文から入ります。συνάγω「集める」のアオリスト分詞 συναγαγώνは主格男性単数でヘロデ王を指します。この動詞の目的語は2つあります。一つはἀρχιερεύςの対格複数 ἀρχιερεῖςとγραμματεύςの対格複数γραμματεῖςです。ἀρχιερεύςは「首長」を意味する ἀρχι-と「僧侶」「聖職者」「(ユダヤ教の)祭司」を意味するἱερεύςの結合語でユダヤ教の文脈では「祭司長」と訳されます。γραμματεύςは一般には「書く人」を意味しますがユダヤ教の文脈では「法律の知識や運用に長けた人」を意味し「律法学者」と訳されます。後者には属格で τοῦ λαοῦ「人々の」と限定がされています。ここまで συναγαγὼν πάντας τοὺς ἀρχιερεῖς καὶ γραμματεῖς τοῦ λαοῦ「すべての祭司長と民間の律法学者を集めて」と訳します。ラテン語の分詞構文congregans omnes principes sacerdotum et scribas populiも忠実になっています。

主節の動詞はπυνθάνομαι「習う」「聞き取る」「尋ねる」の未完了ἐπυνθάνετοです。παρά + 属格で「〜のそばで」を意味し属格複数αὐτῶν「彼ら」が続きます。現代で言えば政治家が有識者を集めておこなう勉強会に近いイメージがあります。ラテン語のsciscitabaturはデポーネント動詞 sciscitor「習う」の未完了で受動態の形をしていますが能動態です。

ここでの主題は間接疑問文で ποῦ「どこに」から始まり主語 ὁ χριστὸς「クリストス」とγεννάω「産む」の現在受動態γεννᾶταιが続きます。χριστὸς「油を塗られた人」はユダヤの文脈では「統治者」を意味しますので東方の賢者たちが言った βασιλεὺς τῶν Ἰουδαίων「ユダヤの人々の王」がユダヤ内部の専門用語に置き換わっている様子がわかります。

 

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