王の質問に対して次のように答えが返されます。
ヘロデ王を訪ねる東方の賢者たち By ジェームズ・ティソ – Online Collection of Brooklyn Museum; Photo: Brooklyn Museum, 2008, 00.159.31_PS2.jpg, パブリック・ドメイン, Link
οἱ δὲ εἶπαν αὐτῷ, Ἐν Βηθλέεμ τῆς Ἰουδαίας· οὕτως γὰρ γέγραπται διὰ τοῦ προφήτου· (Mt 2:5)
at illi dixerunt ei: « Bethlehem Iudaeae. Sic enim scriptum est per prophetam:
それに対して彼らは王に言った。「ユダヤのベツレヘムにおいてです、というのも預言者によってこのように書かれています:
δέは「しかし」「そして」などいろいろな訳ができますがラテン語の接続詞 atは「しかし」「反対に」などの意味合いが強いためこちらを意識して「それに対して」と訳します。
εἶπανはεἶπον「言う」のアオリスト三人称複数で主語は定冠詞 οἱのみ書かれていますが前節で王に招集された「祭司長たちや律法学者たち」です。与格αὐτῷ「彼に」はヘロデ王を指します。この次から彼らの言った内容が始まります。
ἐν Βηθλέεμ τῆς Ἰουδαίαςは「ユダヤのベツレヘムにおいて」の意味です。ἐν + 与格で場所を表し無変化の固有名詞 Βηθλέεμとそれに属格τῆς Ἰουδαίας「ユダヤの」が性格付けをしています。動詞や主語がありませんが前節で出された質問ποῦ ὁ χριστὸς γεννᾶται;ラテン語ではubi Christus nasceretur「どこでクリストスが生まれているか?」の答えなので補完すると以下のような文章になります。
ὁ χριστὸς γεννᾶται ἐν Βηθλέεμ τῆς Ἰουδαίας.
Christus nasceretur Bethlehem Iudaeae.
クリストスはユダヤのベツレヘムにおいて生まれている。
ラテン語ではBethlehem Iudaeaeと前置詞なしです。こちらのBethlehemもギリシア語と同様に無変化の固有名詞ですが場所を表す奪格であると考えられます。
接続詞 γάρ「実際のところ」「というのは」でその理由を述べています。副詞 οὕτωςは「このように」という意味ですがその指し示すところは次の節で語られることになります。動詞はγράφω「書く」の完了受動態 γέγραπταιです。διά + 属格で動作主を表し「〜によって」と訳します。ここではπροφήτης「預言者」の属格προφήτουが続きます。
主語はありませんので受動の非人称構文と解釈できます。「預言者によってこのように書かれている」と主語なしで直訳できますし能動態にして「預言者はこのように書いている」と訳してもよいでしょう。
この「預言者」は預言者ミカを指しています。というのも次の節はまるまる旧約聖書のミカ書からの引用となるからです。ひとまず「祭司長たちや律法学者たち」は彼らの役目を果たしたといえます。