賢者たちの訪問を正当化しうる預言者の言葉が引用されます。

ベツレヘムの星 By Waldemar Flaig – http://waldemarflaig.com/, Public Domain, Link

Καὶ σὺ, Βηθλεὲμ, γῆ Ἰούδα, οὐδαμῶς ἐλαχίστη εἶ ἐν τοῖς ἡγεμόσιν Ἰούδα· ἐκ σοῦ γὰρ ἐξελεύσεται ἡγούμενος, ὅστις ποιμανεῖ τὸν λαόν μου τὸν Ἰσραήλ. (Mt 2:6)

” Et tu Bethlehem terra Iudae, nequaquam minima es in principibus Iudae; ex te enim exiet dux, qui reget populum meum Israhel ” ».

『そしてベツレヘムよ、ユダの地よ、ユダの君主たちの中でお前は最も小さいものではない、というのもお前の中から統治する者が出てくるだろう、私の民イスラエルを導くものが。』」

最初の σύ「お前」、Βηθλεὲμ「ベツレヘム」、γῆ Ἰούδα「ユダの地」の三つとも呼格で呼びかけとなっています。Ἰούδαは各変化しない単語ですがここではγῆに掛かる属格です。ラテン語のIudas「ユダ」は格変化して属格Iudaeとなっています。

続く主節の動詞はεἰμί「〜である」の二人称単数で呼びかけの相手を指しています。οὐδαμῶςは代名形容詞 οὐδαμός「誰でもない」から派生した副詞で否定の意味を持ちます。ἐλαχίστηは形容詞 ἐλαχύς「小さい」の最上級です。女性単数になっているのはその前に呼びかけで出てきた γῆ「土地」という単語が女性名詞のためです。この事情はラテン語のterraとminimaでも同様です。ここまで οὐδαμῶς ἐλαχίστη εἶで「お前は最も小さいものではない」と訳せます。

ἐν + 与格で最上級の比較対象を表します。続くのはἡγεμών「主権者」「君主」の与格複数 ἡγεμόσινです。ここでも属格Ἰούδαがこれを性格づけています。ἐν τοῖς ἡγεμόσιν Ἰούδαで「ユダの君主たちの中で」と訳せます。

接続詞 γάρ「というのも」で以下理由付けをしています。ἐκ + 属格で出処を表します。ここでは属格 σοῦ「お前」が続き「ベツレヘム」を表しています。動詞はἐξέρχομαι「外に出る」の未来 ἐξελεύσεταιです。この動詞は ἔρχομαι「行く」「来る」の頭に前置詞ἐκ「〜から外へ」が付いたものです。主語はἡγέομαι「導く」「統治する」の現在分詞ἡγούμενοςです。先程出てきたἡγεμώνと同じ由来の言葉です。

ὅστιςはἡγούμενοςに掛かる関係代名詞で以下その説明がされます。ποιμανεῖはποιμαίνω「導く」の未来です。その対象は対格 τὸν λαόν μου「私の民」、もう一つの対格 τὸν Ἰσραήλ「イスラエル」でその言い換えをしています。この動詞ποιμαίνωは名詞 ποιμήν「羊飼い」から派生していて本来は「羊飼いの仕事をする」という意味です。羊飼いが羊を導くようにこの統治者は「私の民、イスラエル」を導くと例えています。

この部分は祭司長たちと律法学者たちが引用した文で旧約のミカ書５章からとされています。調べてみるとギリシア語Septuaginta版では第１節、ラテン語Vulgataでは第２節と微妙に構成が異なっていました。以下に引用します。

Καὶ σύ, Βηθλεεμ οἶκος τοῦ Εφραθα, ὀλιγοστὸς εἶ τοῦ εἶναι ἐν χιλιάσιν Ιουδα· ἐκ σοῦ μοι ἐξελεύσεται τοῦ εἶναι εἰς ἄρχοντα ἐν τῷ Ισραηλ, και αἱ ἔξοδοι αὐτοῦ ἀπ‘ ἀρχῆς ἐξ ἡμερῶν αἰῶνος. (Mich 5:1)

et tu Bethleem Ephrata parvulus es in milibus Iuda ex te mihi egredietur qui sit dominator in Israel et egressus eius ab initio a diebus aeternitatis (Mich 5:2)

このソースではここででてきた否定辞 οὐδαμῶςやnequaquamに相当する言葉がなく「小さいもの」であることは特に否定されていません。