東方の賢者たちによるイエスへの訪問はフランス語で Adoration des mages、英語でAdoration of the magiと呼ばれます。

Par Bonifazio Veronese — Travail personnel, Sailko, 14 août 2013, 14:52:23, CC BY-SA 3.0, Lien

καὶ ἐλθόντες εἰς τὴν οἰκίαν εἶδον τὸ παιδίον μετὰ Μαρίας τῆς μητρὸς αὐτοῦ, καὶ πεσόντες προσεκύνησαν αὐτῷ, καὶ ἀνοίξαντες τοὺς θησαυροὺς αὐτῶν προσήνεγκαν αὐτῷ δῶρα, χρυσὸν καὶ λίβανον καὶ σμύρναν. (Mt 2:11)

Et intrantes domum viderunt puerum cum Maria matre eius, et procidentes adoraverunt eum; et apertis thesauris suis, obtulerunt ei munera, aurum tus et murram.

そして家に入った彼らはその母であるマリアとともにいる小さいこどもを見て、身を低くして彼に拝謁し、彼らの宝物を開き彼に贈り物を差し出した、金と乳香と没薬を。

接続詞 καί「そして」で区切られる三つの主節で構成されています。

最初の主節は分詞構文から始まります。ἔρχομαι「来る」「行く」のアオリスト分詞 ἐλθόντεςは主格複数で省略されている主語「賢者たち」を指します。εἰς + 対格で「〜の中へ」を表し、οἰκία「家」の対格 οἰκίανを伴い、εἰς τὴν οἰκίανは「家の中に」を意味します。ἐλθόντες εἰς τὴν οἰκίανは「家（の中）に入った彼らは」と訳します。

このοἰκίαとは別にοἶκος「家」という単語もありますが、οἰκίαが建物としての「家」そのものを指しているのに対して、οἶκοςは建物だけでなく土地や生活に必要な道具や生産手段も含めたより大きな範囲を指す言葉です。

動詞は εἶδονは一人称単数と三人称複数が同形で、それぞれ「私は見た」「彼らは見た」の意味になります。ここでは主語が賢者なので後者です。そして見た対象は τὸ παιδίον「小さい子ども」で 、μετὰ Μαρίας「マリアのともにいる」と説明があります。ギリシア語の「マリア」はΜαριάμとΜαρία の二種類があり前者は無変化ですが後者は第一変化形に従って格変化します。ΜαρίαςはΜαρίαの属格になります。τῆς μητρὸς αὐτοῦは「彼の母親」の意味で同じ属格になっていることから「マリア」の言い換えであることがわかります。

次の主節ではπίπτω「落とす」「身を低くする」のアオリスト分詞πεσόντεςが省略されている主語「賢者たち」に掛かっています。動詞はπροσκυνέω「神聖なものに会う」「拝謁する」のアオリストです。拝謁する相手は与格 αὐτῷ「彼に」です。

最後の主節でも分詞構文があります。ἀνοίγνυμι「開く」のアオリスト分詞 ἀνοίξαντεςでこれも「賢者たち」に掛かっています。開くものは θησαυρός「宝物」の対格複数θησαυρούςで属格複数αὐτῶν「彼らの」が掛かっています。動詞はπροσφέρω「前に運ぶ」のアオリストπροσήνεγκανです。差し出す相手は与格 αὐτῷ「彼に」です。差し出すものδῶρον「贈り物」の複数δῶραですが、三つの対格単数でその言い換えがされています。χρυσός「金」の対格χρυσόν、λίβανος「乳香」の対格λίβανον、σμύρνα「没薬」の対格σμύρνανです。

乳香はBoswelliaという樹木の樹液を固めたもので古代世界では香料として使われていました。フランス語では単なるお香の意味で使われるencens、英語ではfrankincenseと呼ばれています。没薬も同様にCommiphoraという樹木の樹液から作られます。フランス語でmyrrhe、英語でmyrrhと呼ばれています。両方共神聖な儀式に使われてきたお香とされています。

乳香 By snotch – photo taken by author, Public Domain, Link

没薬 Link

賢者たちは複数ですが「三人」である記述は福音書にはありません。この数字は贈り物に出てきた三種類の品に由来するとされています。