皇帝アウグストゥスの布告、クゥイリーヌスの人口調査のために人々は移動します。
καὶ ἐπορεύοντο πάντες ἀπογράφεσθαι, ἕκαστος εἰς τὴν ἑαυτοῦ πόλιν. (Lc 2:3)
Et ibant omnes, ut profiterentur, singuli in suam civitatem.
そしてすべての人が人口調査のためにそれぞれ自分の町へ行った。
主語は形容詞πᾶς「すべて」の男性複数 πάντες「すべての人」、動詞はπορεύωの未完了中動態 ἐπορεύοντοです。πορεύωは能動態では「運ぶ」の意味ですが中動態では「行く」「歩く」の意味になります。ラテン語の動詞ibantはeo「行く」の未完了能動態です。
ἀπογράφεσθαιはἀπογράφω「人口調査する」の現在不定詞中受動態で、ἐπορεύοντοの目的を表します。受動態であれば「人口調査されるために行った」と訳されますが、名詞化して「人口調査のために行った」としたほうが日本語としてわかりやすいと思います。
ラテン語ではこの部分は目的を表す従属節、ut + 接続法で表現されています。profiterenturは未完了受動態に見えますが元の動詞profiteorがデポーネント動詞のため未完了能動態になります。profiteorは「公に主張する」「申告する」の意味になります。ギリシア語ではἀπογραφὴやἀπογράφεσθαιなど一貫して同じ語根の単語で「人口調査」を表していますが、ラテン語では前節と前々節でdescribereturとdescriptioとで同じ語根でしたが、このprofiterenturは別由来の単語になっています。
行き先はεἰς + 対格で「〜の中へ」「〜へ」の意味になります。ここではπόλις「町」の対格単数πόλινが指定されています。さらに「町」は属格ἑαυτοῦ「自分自身の」で説明があります。またἕκαστος「それぞれ」を意味するのですが主格単数なので主格複数である主語πάντεςと一致しません。一致するには ἔκαστοιとするかあるいは副詞にしてἐκάστως「めいめいに」となっている必要があります。ラテン語のsinguliは主格男性複数なのでomnesと一致しています。