イエスの誕生(6)出産の日


マリアにとって重要な日が迫ります。

Bethlehem skyline from Church of the Nativity
降誕教会 By Daniel CaseOwn work, CC BY-SA 3.0, Link

Ἐγένετο δὲ ἐν τῷ εἶναι αὐτοὺς ἐκεῖ ἐπλήσθησαν αἱ ἡμέραι τοῦ τεκεῖν αὐτήν, (Lc 2:6)

factum est autem, cum essent ibi, impleti sunt dies, ut pareret,

しかし次のような出来事が起こった、彼らがそこにいる間に彼女の出産する日が満ちたのだった、

Ἐγένετο δὲ「しかし、あることが起こった」で一度区切りがあり、それ以降で出来事が語られます。主語はἡμέρα「日」の複数 ἡμέραιで動詞はπίμπλημι「満たす」のアオリスト受動態です。直訳すると「日々が満たされた」となりますが日本語の表現としては「日が満ちた」として良いと思います。

ἐν + 与格で時を表しますが、ここでは分詞構文になっています。分詞構文を与格にするには頭に与格中性単数の定冠詞τῷを付けます。分詞構文の動詞はεἶναιでεἰμί「いる」の現在分詞、主語はαὐτόςの対格男性複数 αὐτοὺς、それに副詞 ἐκεῖ「そこに」でできています。ἐν τῷ εἶναι αὐτοὺς ἐκεῖで「彼らがそこにいる間に」となります。ラテン語の場合は接続詞cumを使って従属節で同様の説明されています。essentはsumの接続法未完了です。

また主節の主語 ἡμέραιにも属格で分詞構文の修飾がされています。分詞構文を属格にするには同様に属格中性単数の定冠詞 τοῦを分詞構文の前に付けます。こちらの主語は対格女性単数 αὐτήν「彼女」で動詞はτίκτω「産む」のアオリスト不定詞 τεκεῖνです。ラテン語ではこちらも接続詞 utを使って従属節を使っています。pareretはpario「産む」の接続法未完了です。

ラテン語には定冠詞はありませんがギリシア語にはそれがあるため分詞構文を格変化させることができます。このためにギリシア語では従属節を少なくして構文をシンプルにすることが可能になります。ラテン語ではこの表現はできませんし、ロマンス諸語や英語など現代語でも不可能です。

ギリシア語のἐκεῖ、ラテン語のibiとあるように「そこ」とは二人が人口調査のためにやってきたベツレヘムの町を指しています。

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