イエスの誕生(7)飼い葉桶


日が満ちてイエスが誕生します。

Crib of jesus.jpg
プレゼピオ By Herald – https://pixabay.com/en/crib-christmas-father-christmas-1915352/, CC0, Link

καὶ ἔτεκεν τὸν υἱὸν αὐτῆς τὸν πρωτότοκον, καὶ ἐσπαργάνωσεν αὐτὸν καὶ ἀνέκλινεν αὐτὸν ἐν φάτνῃ, διότι οὐκ ἦν αὐτοῖς τόπος ἐν τῷ καταλύματι. (Lc 2:7)

et peperit filium suum primogenitum; et pannis eum involvit et reclinavit eum in praesepio, quia non erat eis locus in diversorio.

そして彼女はその最初の息子を産んだ;そして彼を布で包み、飼い葉桶の中に寝かせつけた、なぜなら宿には彼らの場所がなかったからであった。

動詞はτίκτω「産む」のアオリストἔτεκεν、主語はありませんがマリアです。目的語は対格 τὸν υἱὸν αὐτῆς「彼女の息子」で、それに形容詞 πρωτοτόκοςの対格男性単数 πρωτότοκον「最初に生まれた」の修飾語が添えられています。このπρωτοτόκοςもτίκτωに由来する言葉の前に πρῶτος「最初の」が添えられたものなので、同じ動詞に由来する同語反復の響きが感じられます。同語反復を回避する傾向のある現代語とは違う古典語の特徴です。ラテン語ではpeperitとprimogenitumは異なる由来の単語ですが一般にラテン語でも同語に由来する単語の反復は随所に見られます。

ἐσπαργάνωσενはσπαργανόω「包む」のアオリストです。同じ由来の中性名詞 σπάργανονが「子供を包むための布」を意味する単語ですので ἐσπαργάνωσεν αὐτόνは「彼を布で包んだ」と訳すことができます。ラテン語のpannisはpannus「布」「毛布」の奪格複数で、pannis eum involvitは「布によって彼を包んだ」と読めます。

ἀνέκλινενはἀνακλίνω「もたせかける」のアオリストです。その場所はἐν + 与格で表現されますがφάτνη「飼い葉桶」の与格 φάτνῃが続きます。このφάτνηという単語はその後「イエスの誕生の情景」を指す意味にも使われるようになりました。クリスマスで見かけるイエス誕生のジオラマのようなものをプレゼピオと呼びますが、これはラテン語のpraesepiumの奪格 praesepioに由来し、イタリア語のpresepioを経由して日本にも伝わったようです。ちなみにフランス語ではune crèche、英語ではcribまたはmangerといいます。

διότιは理由を表す接続詞でなぜ「飼い葉桶」なのかを説明する従属節が続きます。主語はτόπος「場所」、ἐν + 与格で場所を示し、καταλύματιは κατάλυμα「宿」の与格、 動詞はοὐκ ἦνで「存在しなかった」、αὐτοῖςは与格で「彼らに対して」となります。

実際にイエスの誕生が家畜小屋であったのかはここからは読み取れませんが「飼い葉桶」から類推すればそれは妥当な解釈でしょう。ヨセフとマリアがただ宿泊するだけであれば部屋はあったかもしれませんが分娩をするとなると話は違います。しかも人口調査の折に人の移動が多く部屋が不足していたことでしょう。産婆あるいは助産師の存在はここでは確認できませんがヨセフがマリアの初産とイエスの誕生のために奔走したことは想像に難くないでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください