野にいる羊飼いたちは天使を目撃することになります。
By Joachim Wtewael – zwF6_aMYatvg1A at Google Cultural Institute maximum zoom level, Public Domain, Link
καὶ ἄγγελος κυρίου ἐπέστη αὐτοῖς καὶ δόξα κυρίου περιέλαμψεν αὐτούς, καὶ ἐφοβήθησαν φόβον μέγαν. (Lc 2:9)
Et angelus Domini stetit iuxta illos, et claritas Domini circumfulsit illos, et timuerunt timore magno.
そして主の使いが彼らの上に現れ、主の栄光が彼らの周囲を照らし、彼らは恐れに恐れた。
καίで3つの主節が連結されています。
最初の文の主語 ἄγγελοςは「使い」「メッセンジャー」の意味ですが聖書の文脈では「天使」とも訳されます。ここはκύριος「主人」の属格 κυρίουで修飾されているので単に「使い」と訳して良いと思います。動詞は ἐφίστημι「上に立つ」のアオリスト ἐπέστηです。この動詞は前置詞 ἐπί「〜の上に」と ἵστημι「立つ」が連結したものです。ἵστηεμιのἱが有気音のためἐπίのπは縮約時に有気化してἐφίστημιのように φになります。ただしアオリストの場合には無気化したἔστηにἐπίが頭につくためἐπέστηのように πのままになります。αὐτοῖςは与格で羊飼いたちを指します。動詞に含まれる前置詞 ἐπίが与格を取るのでこの与格は前置詞に対応したものと考えられます。よって ἐπέστη αὐτοῖς「彼らの上に立った」と訳すことができます。ラテン語の場合にはsto「立つ」の完了 stetitとは別に前置詞 iuxta「〜のそばに」を使って表現しています。
次の文の主語δόξαは通常は「意見」の意味ですが聖書の文脈では「栄光」と訳されます。対応するラテン語のclaritasは「明るさ」「輝き」「名誉」などの意味です。通常δόξαにはgloriaが使われることが多いのですが、ラテン語文では輝いてまばゆいことを強調したかったようです。δόξα κυρίουはフランス語LSでは la groire du Seigneur、英語KJVでは the glory of the Lordと訳されています。動詞はπεριλάμπω「周囲を照らす」のアオリストπεριέλαμψενで、この単語も前置詞 περί「〜の周囲に」と動詞 λάμπω「照らす」の複合語です。日本語のランプはこの動詞から派生した名詞λαμπάς「たいまつ」に由来しています。αὐτούς「彼らを」は対格複数ですが、対格である理由は単に動詞の目的語ともπερίが対格支配の前置詞のためとも考えられます。ラテン語でも複合動詞 circumfulsitを使っています。これは対格支配の前置詞circumと動詞 fluoが連結したものです。
最後の文の動詞はφοβέω「恐れさせる」のアオリスト受動態 ἐφοβήθησανです。受動態なので「恐れさせられた」となりますが単に「恐れた」として良いでしょう。主語はありませんが動詞が三人称複数なので「羊飼いたち」を指しています。恐れる対象はφόβος「恐れ」の対格で、ここでも同じ由来の単語の同語反復が見られます。ἐφοβήθησαν φόβον μέγανは直訳すると「彼らは大きな恐れを恐れた」となります。ラテン語ではtimoreは奪格なのでtimuerunt timore magnoは「彼らは大きな恐れによって恐れた」となります。日本語としてはこのままだとおかしいですが同語反復の雰囲気は残したいので「彼らは恐れに恐れた」と訳します。