イエスの誕生(10)天使の知らせ1


天使は羊飼いたちに告げます。

The Shepherds and the Angel.jpg
By Carl Blochhttp://www.the-athenaeum.org/art/detail.php?ID=49654, Public Domain, Link

καὶ εἶπεν αὐτοῖς ὁ ἄγγελος, Μὴ φοβεῖσθε, ἰδοὺ γὰρ εὐαγγελίζομαι ὑμῖν χαρὰν μεγάλην ἥτις ἔσται παντὶ τῷ λαῷ, (Lc 2:10)

Et dixit illis angelus: «Nolite timere; ecce enim evangelizo vobis gaudium magnum, quod erit omni populo,

そして天使は彼らに言った、「恐れるな、みなさい、というのも私は大きな喜びである良い知らせをあなた達に伝えるのだ、そしてその喜びはすべての人々のものとなるであろう、

主節の主語は ὁ ἄγγελος「使い」「天使」で、動詞はεἶπον「言った」のアオリスト三人称単数 εἶπενです。この動詞はアオリスト時制しかありません。言った相手は与格複数のαὐτοῖς「彼らに対して」で羊飼いたちを指します。ἄγγελοςはガンマγが2つ連続しますが、この最初の音はgではなく鼻音化してŋの音になります。このためラテン語ではangelusとなります。

この後は天使の言った内容が続きます。μήと命令法で「〜するな」という表現になります。ここではφοβέω「恐れさせる」の命令法二人称複数受動態 φοβεῖσθεで「恐れさせられるな」つまり「恐れるな」となります。ラテン語では否定の命令は nolo「欲しない」の命令法 noliteに不定詞を付けます。noliteは相手が複数の場合で、相手が一人の場合には noliが使われます。

注意を促す副詞 ἰδού「見なさい」「ほら」、接続詞 γάρ「というのも」「実際のところ」が挿入され恐れる必要のない理由が語られます。εὐαγγελίζομαιは「良い知らせを伝える」という意味で、εὐ-「良く」と ἄγγελος「使い」と動詞化語尾‎ -ίζωが連結したεὐαγγελίζωの中動態です。新約の文脈では「福音を述べ伝える」という解釈もできます。伝える相手は与格 ὑμῖν「あなたたちに」です。

ラテン語ではこの動詞をそのまま借用してevangelizoと表記して使っています。この動詞に由来するフランス語の évangéliserや英語のevangelizeという動詞もありますが、LSではannoncer une bonne nouvelle、KJVではbring good tidingsと訳されています。

動詞εὐαγγελίζωには対格で目的語があります。χαρά「喜び」の対格χαράνとμέγας「大きな」の対格μεγάληνです。そもそもこの動詞には目的語的な「良い知らせ」の意味も含まれているので、χαρὰν μεγάλην「大きな喜び」は「良い知らせ」の言い換えとして訳します。εὐαγγελίζομαι χαρὰν μεγάληνは「私は大きな喜びである良い知らせを伝える」とします。

ἥτιςは関係代名詞でχαρὰνに掛かります。ἔσταιはεἰμί「〜である」の未来で、πᾶςの与格παντί「すべて」とλαός「人々」の与格λαῷでだれに対するものかを説明しています。与格には所有の意味をもたせることができますので「すべての人々の喜び」と解釈できます。

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