天使の伝える良い知らせとは一体どのようなものでしょうか。
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ὅτι ἐτέχθη ὑμῖν σήμερον σωτὴρ ὅς ἐστιν χριστὸς κύριος ἐν πόλει Δαυίδ. (Lc 2:11)
quia natus est vobis hodie Salvator, qui est Christus Dominus in civitate David.
今日あなたたちにクリストス、主である救済者がダヴィデの町で生まれたのだ。
ギリシア語のὅτιやラテン語のquiaは従属節を作る接続詞で、この節全体が従属節になります。前節の天使の伝える良い知らせの内容がここで明かされます。
主語はσωτὴρ「救済者」「解放者」で、関係代名詞 ὅςを伴ってさらに関係節が作られます。そこでは ἐστιν「〜である」χριστὸς「油を塗られた男」、 κύριος「主人」とあります。χριστὸςはギリシア語以外では訳すことはありません。ラテン語でChristus、フランス語と英語はChristと書かれます。σωτὴρ ὅς ἐστιν χριστὸς κύριοςは「クリストス、主である救済者」と訳せます。
動詞はτίκτω「産む」のアオリスト受動態で「生まれた」の意味です。ラテン語でも同様にnasco「産む」の完了受動態 natus estとなっています。ラテン語の完了、過去完了、未来完了は受動態では完了分詞にsumの変化を伴う複合時制となります。
ὑμῖνは与格で「あなたたちに」、σήμερονは副詞で「今日」です。またἐν + 与格で場所が示され、πόλις「町」の与格πόλειと無変化のΔαυίδ「ダヴィデ」が続きます。
旧約聖書に書かれている偉大な祭司や王はその地位に付く時に油を塗ることになっていたため、χριστὸς「油を塗られた男」は「いにしえの理想的なユダヤ人の統治者」と解釈することができます。また当時のユダヤはユダヤ人のヘロデ大王に統治されていましたが実質的には強大なローマの属国のような状況にありました。これを打破するようなσωτὴρ「救済者」、χριστὸς「クリストス」でありκύριος「主人」である存在を人々は求めていたと推測できます。イエスはこのような時代に地上に現れたのでした。