イエスの誕生(12)天使の知らせ3


救済者の誕生について、天使は羊飼いたちにさらに伝えます。

12th century unknown painters - The Annunciation to the Shepherds - WGA19696.jpg
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καὶ τοῦτο ὑμῖν τὸ σημεῖον, εὑρήσετε βρέφος ἐσπαργανωμένον καὶ κείμενον ἐν φάτνῃ. (Lc 2:12)

Et hoc vobis signum: invenietis infantem pannis involutum et positum in praesepio ».

そしてあなたたちへの兆しは次のことである、あなた達は生まれたばかりの赤ん坊を見つけることになるだろう、布に包まれ、飼い葉桶に横たえられているのを。」

τοῦτο「それ」も σημεῖον「印」「兆し」も主格で動詞ἐστί「〜である」が省略されているものと思われます。ここで問題になるのは主格のどちらが主語になるかということですが、ギリシア語では一般に定冠詞がつくものが主語とみなされます。現代語の定冠詞のように既出のものである必要はありません。そのため τὸ σημεῖον「印」が主語になり、τοῦτοがその補語となります。この τοῦτοは続く文章の内容を指すため後方参照 cataphoriqueです。与格 ὑμῖν「あなたたちに対して」は主格のどちらにも掛かりえますので、主語に掛かる場合には「あなたたちへの兆しは以下のことである」、補語に掛かる場合には「兆しはあなたたちにとって以下のようなものである」となります。とはいえ文意に大きく違いは出てこないでしょう。

ラテン語には定冠詞がないため事情が変わってきます。実際にはどれが主語か見分けがつきませんし、そのどちらも許容する言語であるとも言えます。フランス語LSではvoici à quel signe vous le renconnaîtrez「これがあなた達の認めるであろう印である」となっていてvoiciを使いêtreの使用を回避することで原文の雰囲気をうまく出しています。英語KJVではthis shal be a sign unto you「これがあなた達に対しての印となるであろう」とτοῦτοを主語として解釈しています。

兆しについてはその次に述べられます。動詞はεὑρίσκω「見つける」「出会う」の未来二人称複数で、主語はありませんが羊飼いたちです。見つけるものは対格 βρέφος「新生児」「胎児」です。βρέφοςは中性名詞なので主格と対格は同形です。

βρέφοςには2つの分詞で修飾がされています。一つはσπαργανόω「布で包む」の完了受動分詞ἐσπαργανωμένονです。この動詞 σπαργανόωはマリアがイエスを布で包んだときに使われたものと同じです。ラテン語のpannis involvoも同様です。もう一つはκεῖμαι「横たえる」の完了受動分詞 κείμενονで場所は ἐν φάτνῃ「飼い葉桶の中に」です。

天使の良い知らせはは漠然としたものではなく、羊飼いたち自身で確認できるところまで落とし込んで説明されています。ここまでの三つの節で述べられてきた天使の言葉はここで一旦終わりますので開いた鍵括弧を閉じます。

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