イエスの誕生(13)天の軍隊の登場


天使の語りの後にさらにイベントが発生します。

Maître des cortèges Annunciation to the Shepherds.jpg
By Master of the Cortegehttp://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2014/old-master-paintings-n09161/lot.26.html, Public Domain, Link

καὶ ἐξαίφνης ἐγένετο σὺν τῷ ἀγγέλῳ πλῆθος στρατιᾶς οὐρανίου αἰνούντων τὸν θεὸν καὶ λεγόντων, (Lc 2:13)

Et subito facta est cum angelo multitudo militiae caelestis laudantium Deum et dicentium:

そして突然、大勢の天の軍隊が天使に加わった、神を賛美しながらそして次のように言いながら:

まず主節の動詞はγίγνομαι「成る」「現れる」のアオリストἐγένετοです。主語は中性名詞のπλῆθος「大勢」ですが集合名詞なので単数です。これに女性名詞 στράτιος「軍隊」の属格単数 στρατιᾶςで修飾されます。πλῆθος στρατιᾶςは直訳で「軍隊の大勢」となりますが、実際の日本語では「大勢の軍隊」と訳したほうが良いでしょう。次にくる形容詞 οὐρανίουも οὐράνιος「天の」の属格女性単数でστρατιᾶςと同格です。ἐξαίφνηςは副詞で「突然」、σὺν + 与格で「〜と一緒に」、ここでは ἄγγελος「使い」「天使」の与格 τῷ ἀγγέλῳが続きます。

その天使はすでに登場しているので「大勢の軍隊が天使とともに現れた」というと別の天使も新たに現れたように読めてしまいますが、実際のところは「大勢の軍隊が現れて(その結果)天使と一緒になった」という意味になります。ここでは「大勢の軍隊が天使に加わった」と訳したいと思います。

次に2つの分詞、αἰνέω「語る」「賛美する」の現在分詞 αἰνούντωνとλέγω「言う」の現在分詞 λεγόντωνが続きます。両方とも属格複数であたかもστράτιοςと同格に見えますが、男性か中性の形なので女性名詞のστράτιοςには掛かりません。それぞれ属格女性複数のαἰνουσῶνとλεγουσῶνであれば問題はないのですがそうなっていません。ありえるのは、πλῆθος στρατιᾶς「大勢の軍隊」が主格中性単数と属格女性複数の組み合わせであったため、これに掛かる分詞は主格の中性に影響され属格中性複数になったのではないかという推測です。これはattractionと呼ばれギリシア語の文章で良く見られる現象です。

ちなみにラテン語の場合、女性名詞 multitudo「大勢」は主格単数、militiaeは女性名詞militia「軍隊」の属格単数、形容詞 caelestis「天の」も属格女性単数までは属格が単数な点を除けばギリシア語と同じ構文ですが、続く分詞laudantiumとdicentiumが属格複数になっているのが文法的に解釈を難しくしています。軍隊というのは集団で実際には天使の集団であると考えると属格女性単数 militia = 属格男性複数 angelorumとなりこの書かれていない angelorumに掛かるのであればlaudantiumもdicentiumも同格で文法上の問題はなくなります。少し強引な解釈ですが他にいい案があればコメント下さい。もともとのギリシア語文でもattractionが発生していて混乱が起こりやすい箇所ではあります。

αἰνούντωνには目的語θεόνが与えられ αἰνούντων τὸν θεὸνは「神を賛美しながら」と読むことができます。またλεγόντωνは「言いながら」ですがその言う内容は次の節で語られることになります。

いずれにしてもここに至るまでは一人の天使の語りでしたがここからは大勢の軍隊になるという点は重要で、ちょうど独唱と合唱のような対比を表現していると理解できます。

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