イエスの誕生(18)人々の反応


羊飼いたちの伝えた話に人々はどのように思うのでしょうか。

El Greco (Domenikos Theotokopoulos) - The Adoration of the Shepherds (ca. 1605–10) - Metropolitan Museum of Art.jpg
By El GrecoMetropolitan Museum of Art, Public Domain, Link

καὶ πάντες οἱ ἀκούσαντες ἐθαύμασαν περὶ τῶν λαληθέντων ὑπὸ τῶν ποιμένων πρὸς αὐτούς· (Lc 2:18)

Et omnes, qui audierunt, mirati sunt de his, quae dicta erant a pastoribus ad ipsos.

そしてこれを聞いたすべての人は驚いた、羊飼いたちによって彼らに語られたことについて。

πάντεςはπᾶς「すべて」の主格男性複数で「すべての人」、これにἀκούω「聞く」のアオリスト分詞の主格男性複数が続くので主語は「聞いたすべての人」となります。ἀκούωの目的語はありませんが羊飼いの話を指しています。ラテン語ではomnesを先行詞としてquiで関係節を作ります。動詞 audieruntはaudio「聞く」の完了です。

動詞はθαυμάζω「驚く」「賞賛する」のアオリストです。ラテン語ではmiror「驚く」「賞賛する」「動揺する」の完了 mirati suntです。このラテン語の動詞はデポーネント動詞といい能動態がなく受動態しかありませんが意味上は能動態になります。

περί + 属格で「〜を主題として」「〜について」の意味になりλαλέω「話す」のアオリスト受動分詞の属格中性複数 λαληθέντωνが続きます。この分詞が複数なのは羊飼いたちが各所で多くの人に何回も話したことを意味します。ラテン語でもde his「それらについて」ではじまりますが、hisは中性複数でquaeで関係節を築いています。de his, quae dicta erantで「言われたそれらについて」と読むことができます

ὑπόは行為者を表す属格支配の前置詞ですのでὑπὸ τῶν ποιμένωνは「羊飼いたちによって」と読めます。πρός + 対格で「〜に対して」となり対格男性複数のαὐτούςは「彼ら」つまり πάντες οἱ ἀκούσαντες「聞いたすべての人」を意味します。ラテン語も a pastoribus「羊飼いたちによって」、ad ipsos「彼らに対して」で同じ形になっています。

羊飼いたちの話しを聞いた人々の反応は ἐθαύμασαν「驚いた」「賞賛した」とありますが、これは肯定的にも否定的にも捉えられます。ラテン語の動詞 mirorも同様です。参考までにフランス語LSと英語KJVの訳を見てみます。

Tous ceux qui les entendirent furent dans l’étonnement de ce que leur disaient les bergers.

And all they that heard it wondered at those things which were told them by the shepherds.

dans l’étonnement「驚きの中に」やwondered「驚いた」「疑念を抱いた」とギリシア語ラテン語より少し肯定面が抑えられた表現のようです。

次節とも関係あるのですが重要なのはこれを心に留め信じるかどうかです。これを聞いた人々がイエスを訪問したとは語られていないので、「驚きあるいは賞賛したもののそれに対する自発的な行動には至っていない」と解釈することができます。

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