世界への介入後に来る世界のことについて神は語ります。
By Horace Vernet – http://hdl.handle.net/11259/collection.37341, Public Domain, Link
ἐν ταῖς ἡμέραις ἐκείναις οὐ μὴ εἴπωσιν Οἱ πατέρες ἔφαγον ὄμφακα, καὶ οἱ ὀδόντες τῶν τέκνων ᾑμωδίασαν· (Ier LXX 38:29 / Μασ. 31:29)
in diebus illis non dicent ultra patres comederunt uvam acerbam et dentes filiorum obstipuerunt (Ier 31:29)
それらの日々において人々はこう言うことはないであろう、「父親たちが未熟なぶどうを食べ、子どもたちの歯がグラグラした」とは、
ἐν + 与格で時間を表します。ταῖς ἡμέραις ἐκείναιςは与格複数で「それらの日々」の意味です。ここでは前節で語られていた行為の後の日々を指しています。εἴπωσινはεἶπον「言う」のアオリスト接続法三人称複数です。οὐとμὴはどちらも否定の副詞でοὐは動詞にμήは以降に出てくる発言内容にかかります。二重否定のように見えますが単純な否定とみてよいでしょう。主語はないので不特定の「人々」を指しています。ここはフランス語LSであればon、英語KJVであればtheyで訳されています。
発言内容は2つの主節と接続詞καίで構成されています。最初の主語は οἱ πατέρεςでπατήρ「父親」の複数、動詞はἐσθίω「食べる」のアオリスト ἔφαγονで食べたものはὄμφαξ「熟していない果実(特にぶどう)」の対格です。ラテン語では二語でuvam「ぶどう」とacerbam「熟していない」「苦い」で説明されています。
次の主語はὀδούς「歯」の複数 οἱ ὀδόντεςでその所有者はτέκνον「子供」の属格複数τέκνων、動詞はαἱμωδιάω「グラグラしたり出血した歯を持つ」のアオリスト ᾑμωδίασανです。
この表現は様々な解釈ができると思いますが親と子供に因果関係があるという点で異論はないでしょう。αἱμωδιάωと同じ語幹を持つ単語をみてみると形容詞 αἱμωδης「赤い血の」「壊血病の」と αἱμωδία「壊血病」というのが見つかりました。これらは αἷμα「血」に関する語のようです。この壊血病はビタミンCの不足が原因で発症する病気で歯茎に血が出たり歯が抜けたりする症状もあります。特に深刻な遺伝が認められずビタミンCを補うことで発症しなくなるようです。少なくとも親が壊血病になるような食環境であれば子供も影響があるということは言えそうです。これに相当するラテン語の動詞は obstipueruntで「無感覚になった」「麻痺する」という意味です。
ここで神の世界への介入後の世界ではこの親子の因果関係については語られなくなることが提示されています。