新約聖書のなかで「新約」を意味するギリシア語のδιαθήκη καινήが記述されている箇所を読みます。コリントの信徒への手紙二で見つかります。
コリントスの街 By Andrew Smith – Flickr: Gulf of Corinth from Acrocorinth, Link
Ἀρχόμεθα πάλιν ἑαυτοὺς συνιστάνειν; ἢ μὴ χρῄζομεν ὥς τινες συστατικῶν ἐπιστολῶν πρὸς ὑμᾶς ἢ ἐξ ὑμῶν; (2 Cor 3:1)
incipimus iterum nosmetipsos commendare? Aut numquid egemus, sicut quidam, commendaticiis epistulis ad vos aut ex vobis?
私達は再び自分たち自身を推薦することを始めているのだろうか?それとも私達はあなた方に宛てた、あるいはあなた方からの手紙、推薦に値する旨の書かれた手紙のようなものを必要としているのではないだろうか?
ἀρχόμεθαはἄρχω「始める」の中動態現在一人称複数、始める内容はσυνιστάνω「推薦する」の不定詞 συνιστάνεινです。この動詞はσυνίστημιとも書かれσυν-「一緒に」とἵστημι「立つ」からできている単語です。推薦するものは対格複数 ἑαυτούς「自分自身」です。πάλινは副詞「再び」です。セミコロンはギリシア語の疑問符で?に相当します。
接続詞 ἤ「あるいは」「それとも」の後にもう一つ疑問文が続きます。χρῄζομενはχρῄζω「必要とする」の一人称複数現在で必要とする対象はτις「ある人」「あるもの」の対格中性複数で属格で説明があります。女性名詞 ἐπιστολή「手紙」の属格複数ἐπιστολῶνに形容詞συστατικός「推薦に値する」の属格女性複数συστατικῶνが添えられています。ὥςは副詞で「のような」の意味です。
最後は前置詞 πρὸς + 対格ὑμᾶςで「あなた方にあてた」、接続詞 ἢ「あるいは」につづいて ἐξ + 属格 ὑμῶνで「あなた方からの」の意味です。μήは否定副詞なので否定疑問文になります。
『コリントの信徒への手紙二』を書いたと言われるパウロが生きていた紀元一世紀の時代には、遠くから届く手紙や書物にはその差出人や書かれた内容が正しいことを証明するための推薦状が必要だったと言われています。「なりすまし」や「認証」の問題は当時にもあったようです。
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