パウロの新約(3)心の推薦状2


パウロの言う手紙つまり推薦状は心の問題であると説明されます。

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コリントスの集会場 By Institute for the Study of the Ancient World from New York, United States of America – Corinth (I), CC BY 2.0, Link

φανερούμενοι ὅτι ἐστὲ ἐπιστολὴ Χριστοῦ διακονηθεῖσα ὑφ’ ἡμῶν, ἐγγεγραμμένη οὐ μέλανι ἀλλὰ πνεύματι θεοῦ ζῶντος, οὐκ ἐν πλαξὶν λιθίναις ἀλλ’ ἐν πλαξὶν καρδίαις σαρκίναις. (2 Cor 3:3)

manifestati quoniam epistula estis Christi ministrata a nobis, scripta non atramento sed Spiritu Dei vivi, non in tabulis lapideis sed in tabulis cordis carnalibus.

あなた方は以下のように明らかにされている者たちである、すなわち、あなた方は私たちによって送られたクリストスの手紙であり、それは黒いインクではなく生ける神の聖霊によって、石の板の上でなく肉体の持つ心という板の上に刻み込まれた手紙である。

主節には動詞がありませんが、ὅτιから始まる従属節に動詞 ἐστὲは「あなた方は〜である」があり、主節では省略されたものと思われます。よってφανερόω「明らかにする」の完了受動分詞主格男性複数とἐστὲで「あなた方は明らかにされたものである」となります。

ὅτι以下が明らかになった内容です。ἐστὲ ἐπιστολὴは前節からある通り「あなた方は手紙である」の意味です。その手紙には、属格 Χριστοῦ「クリストスの」とδιακονέω「奉仕する」のアオリスト受動分詞と ὑφ’ ἡμῶν「私たちによって」で補足があり「私たちによって奉仕されたクリストスの手紙」となります。Χρίστος という言葉は動詞χρίω「油を刷り込む」に由来していますがそもそもはヘブライ語をギリシア語に意訳したものです。日本では一般にカトリックではキリストと読まれますが正教会ではハリストスと読むなど揺れがあります。テキスト以外の意味が混ざらないようにするためにテキストに出てくる時は「クリストス」と読むことにします。

διακονέωはδιάκονος「執事」からできた動詞で、διάκονοςは初期のキリスト教会での役職名だったようです。英語でもdeaconとそのまま使われていて、日本語では「助祭」と呼ばれています。よってδιακονέωは「教会の事務仕事を執り行う」という意味を持ちます。ここでの対象は手紙なので「送られた」と訳してもよいでしょう。

ἐγγεγραμμένηは前にも出てきたとおり「刻み込まれた」という分詞です。与格が2つ続き刻み込まれた手段や道具を表します。一つ目は形容詞 μέλας「黒い」「暗い」の与格中性単数 μέλανιで実体化し「インク」のことを指しているようです。ラテン語では奪格 atramentoで「黒いインク」の意味になっています。もう一つが πνεῦμα「息」「聖霊」の与格単数 πνεύματιで属格 θεοῦ「神」と ζάω「生きている」の現在分詞 ζῶντοςが続きます。οὐ A ἀλλά B は「AでなくB」という構文なので「インクではなく生ける神の聖霊によって」という表現になっています。

οὐ A ἀλλά B の構文はもう一度出てきます。前置詞 ἐν + 与格で「〜の中で」「〜の上で」で、続く女性名詞 πλάξ「板」の与格複数 πλαξὶνで「板の上に」となります。AもBも ἐν πλαξὶνですが材質が異なります。Aの方は形容詞 λίθινος「石でできた」の与格女性複数 λιθίναιςでBの方は女性名詞 καρδία「心」「中心」の与格複数、と形容詞 σάρκινος「肉体の」の与格女性複数 σαρκίναιςです。同格の名詞が並ぶ場合は修飾でなく言い換えになるので「板、いわば肉体の心」という表現になります。

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