パウロの新約(7)古い契約の奉仕


古い契約の元で人々はどのように生きるのでしょうか?

File"-Saint Paul Writing His Epistles" by Valentin de Boulogne.jpg
By Valentin de Boulogne – Blaffer Foundation Collection, Houston, Link

Εἰ δὲ ἡ διακονία τοῦ θανάτου ἐν γράμμασιν ἐντετυπωμένη λίθοις ἐγενήθη ἐν δόξῃ, ὥστε μὴ δύνασθαι ἀτενίσαι τοὺς υἱοὺς Ἰσραὴλ εἰς τὸ πρόσωπον Μωϋσέως διὰ τὴν δόξαν τοῦ προσώπου αὐτοῦ τὴν καταργουμένην, (2 Cor 3:7)

Quod si ministratio mortis, litteris deformata in lapidibus, fuit in gloria, ita ut non possent intendere filii Israhel in faciem Moysis propter gloriam vultus eius quae evacuatur,

そしてもし石に文字として掘られた死の奉仕が栄光のうちになされて、イスラエルの子供たちがモーゼの姿を効力を失ったその姿の栄光のために見ることができないようであれば、

この節全体がεἰ「もし〜ならば」で始まる従属節です。途中の ὥστε「〜となるように」から先がこの従属節の従属節になっていて結果を表現しています。

διακονίαは「奉仕」の意味で前節に出てきたδιάκονος「下僕」と同じ由来の言葉です。これをθάνατος「死」の属格 θανάτουで補完しています。動詞 ἐγενήθηはγίγνομαι「成る」のアオリスト受動態です。ここまでで「死の奉仕がなされた」と読めます。

ἐντετυπωμένηはἐντυπόω「彫る」の完了分詞受動態で、διακονίαと同格の主格女性単数です。ἐν + 与格で「〜の中において」、γράμμα「文字」の与格複数で「文字の中において」、あるいは「文字として」の意味になります。続いてλίθος「石」の与格複数で「掘られる」場所を示します。ここまでで「石に文字として掘られた死の奉仕」となります。

再びἐν + 与格が出てきます。δόξῃはδόξαの与格単数で通常は「意見」「推定」の意味ですが新約聖書の文脈では「栄光」「名誉」と訳されるようです。すこし唐突な感じがしますがラテン語ではin gloria「栄光の中において」と疑義のない言葉遣いになっています。

ὥστε以下には不定詞が来ます。δύνασθαιはδύναμαι「可能である」の現在不定詞で否定辞 μήを伴って「可能でない」の意味になります。可能でない内容は不定詞構文になっています。主語は対格でτοὺς υἱοὺς Ἰσραὴλ「イスラエルの子供たち」、動詞はἀτενίζω「見る」のアオリスト不定詞です。見る対象はεἰς + 対格でπρόσωπον「顔」「姿」の対格単数が続きます。ラテン語でも直訳の in faciemになっています。このπρόσωπονですがフランス語LSではle visage、英語KJVではthe faceのように「顔」の意味で取っていますが顔だけでない全体の外見として「姿」で訳したほうが自然に思われます。ラテン語のfaciesやvultusにも「顔」の他に「外見」の意味があります。

ΜωϋσέωςはΜωσῆς「モーゼ」の属格でπρόσωπονに掛かります。ここまでで「イスラエルの子供たちがモーゼの姿を見ることができない」と読めます。

ラテン語ではὥστεに相当するのはutですがギリシア語の不定詞による構文ではなく接続法が使われています。主語はfilii Israhelで動詞句はnon possent intendereです。

διά + 対格は「〜を通して」「〜の理由で」の意味でδόξα「栄光」の対格 δόξανが続きます。その「栄光」には属格 τοῦ προσώπου αὐτοῦ「彼自身の姿の」で説明があり、さらに同格の対格女性単数の完了中動分詞 καταργουμένηνで補完されています。この分詞の原形はκαταργέω「効力がなくなる」でパウロの手紙に何度も使われている動詞です。ここまでで「効力を失った彼自身の姿の栄光のために」と読めます。

構文としては少し複雑ですがここにパウロの言う「古い契約」の要素が込められていることが分かります。

  • ἡ διακονία τοῦ θανάτου「死の奉仕」
  • ἐν γράμμασιν ἐντετυπωμένη λίθοις「石に文字として掘られた」
  • ἐγενήθη ἐν δόξῃ「栄光のうちになされた」
  • μὴ δύνασθαι ἀτενίσαι τοὺς υἱοὺς Ἰσραὴλ「イスラエルの子供たちはみることができない」
  • τὸ πρόσωπον Μωϋσέως「モーゼの姿」
  • τὴν δόξαν τὴν καταργουμένην「効力を失った栄光」

次の節ではこの従属節に対応する主節が現れそこで新しい契約のことが語られます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください