ドイツ語は20世紀の終わりに書法を統一した。Die Reform der deutschen Rechtschribung von 1996 — 1996年のドイツ語正書法の改正と言われている。それまでは地方や時代で混在していた書き方が統一された。大事なところだけ以下抜粋する。
ßとssの使い分け
ß — エスツェットはssまたはszの合字。直前の母音が長母音の場合にはß、短母音の場合にはssを使う。二重母音は長母音に含める。
直前が短母音の例
- 関係代名詞 dass
- 動詞 müssen「しなければならない」の変化 ich muss, du musst, er muss, wir müssen, ihr müsst, sie müssen
直前が長母音の例
- 名詞 der Fuß, die Füße「足」
- 動詞 schließen「閉める」
- 名詞 der Blumenstrauß「花束」
三重子音の取り扱い
2つ以上の単語を組み合わせて作られる単語は同じ子音が3つ並んでしまうことがある。以前は子音を2つにして続けて書いていたが正書法では3つのままにしておく。またハイフンをつかって連結してもよい。
- die Schfffahrt, die Shiff-fahrt「航行」
- die Balletttänzer, die Ballett-Tänzer「バレエダンサー」
これらは以前Schffahrt, Ballettänzerと書かれていた。
同じ語源の語の統一
同じ語源の単語はそれを同じように保持するようにする。
- die Nummer「数字」– nummerieren「番号を振る」
- tippen「推測する」– der Tipp「ヒント」
以前はnumerieren, Tipなどと書かれていた。
-anz, -enzで終わる名詞に語尾をつけて名詞や形容詞を作る場合
一般にzを使う場合-ziell, -zialとtを使う場合-tiell, -tialと両方が認められている。
- substanziell = substantiell「実在する」
- Potenzial = Potential「可能性」
熟語の取り扱い
2つの単語からできている熟語の場合は連結しても離してもよいとされている。
- kennenlernen = kennen lernen「知り合いになる」
- bekantmachen = bekant machen「公表する」
- stehenbleiben = stehen bleiben「立ち止まる」
- sodass = so dass
熟語の目的語にあたるもの以前は小文字で書かれていましたが大文字も可能となった。ドイツ語の名詞は通常大文字から始まる。
- Recht haben = recht haben「正しい」
以下は大文字のみ。
- auf Deutsch「ドイツにおいて」
- im Allgemeinen「一般的に」
これらは以前auf deutsch, im allgemeinenと書かれていた。
外来語の子音の統一
外来語に含まれるphはf、ghはg、chはsch、サ行のcはssにそれぞれ変換される。カッコの中は変換前のもの。
- fonografisch (phonographisch)
- Jogurt (Joghurt)
- Ketschup (Ketchup)
- Fassette (Facette)
代名詞の大文字化
二人称の敬称Sie, Ihr Ihnen以外の代名詞は小文字で書く。以前は手紙などで大文字で書く習慣があった。
句読点
並置の接続詞の前では以前はカンマをつけていたがつけなくても良くなった。並置の接続詞とはund, oder, entweder…oderなどのこと。
従属節を作る関係代名詞の前にはカンマは必要。
Er weiß, dass sie kommt. — 彼女が来ることを彼は知っている。
その他
他にも行をまたぐときに旧書法ではckをk-kと分けていたがこのような書法は使われなくなった。
また1996年以降も改定はまだされているようなので今後も新しいトピックが出てくるかも。(大文字のßの使用など)