ボンジュール、サクラです。
今日はトランスジェンダーMtFの声について書くことにします。
MtFが女性として生活するには外見でパスするのと同じくらい、声でパスすることが重要と言われます。昔より機会は減ったとはいえ、今でも電話のように声だけで行うコミュニケーションは存在します。その場合、いくら外見を装っても仕方がありません。声が女性、女声であることが重要になります。
まず最初に確認しておきたいのは、男性として一度変声期を迎え低い声になったあとは、仮に女性ホルモンの影響があったとしても自動的に高い声になることはない、ということです。
ただし、声の高さは練習によって高くすることもできます。検索をするとこういった情報はたくさん出てくると思いますので、特にここでは書きません。
今の私の声については、正直なところ、一般的な女性と同じような高さにはなっていません。カラオケで女性曲を歌うとしても相当キーを下げないと裏声だらけになってしまいます。
とはいえ、普段の生活で困ることはありません。高い声をだすことだけが、女声としてパスすることではない、話し方や抑揚の付け方など声の使い方に関係することも同様に大事である、というのが私の意見です。
特に日常で困ることも不自然なこともないため、声について私はパスしていると考えています。ここに至る経緯は、自分の置かれた状況と関係していると思います。
前回書きましたが、私は娘たちの幼少の頃から母親として子育てに関わってきました。娘の所属するサッカーチームでの親の手伝い、持ち回りで数年おきに必ず担当しなければならないPTAの委員など、子育てにおいて親同士の集まりを避けることはできません。そしてほとんどの場合、その役割を引き受けるのは母親で、私もその一人というわけです。
また、二人の娘を育ててきたので、子供の声の出し方、男の子ほど特徴的ではない変声期、大人に近い発声なども、見てきました。幼児の甘い声が、成長した大人の芯のある女声に変化していく様子は、感動的でさえあります。
実のところ、こうした機会を通して、多くの同年代の女性や、成長していく女性の話しぶりを間近で観察し、自分も会話で同調するように実践してきました。英会話をネイティブに教わるのと同じように、私は女性の会話をネイティブに囲まれて教わったのでした。
私の場合、声の課題は今までに抱えていた他の課題よりも優先度は低いものであった上、他の優先度の高い課題が解決すると、自然と気にならなくなり、最終的には課題にさえならなくなってしまいました。
結局のところ、外見にしても、話し方にしても、あまり気にするよりは自然にしていたほうが良いと思っています。「美しい容姿」「愛らしい話し方」など上を望めばキリはありませんが、女性としての生活を実現するのであれば、「『男女どちらか』と尋ねられたときに『女』と判断されること」が最優先の課題だということを忘れてはいけません。
最後に電話の話をしておきます。娘が学校を休むとき、保護者である私が学校に電話しなくてはいけません。「○年○組の〜ですが」と名字だけ名乗ると「〜さんのお父様ですね」と言われることがあります。残念ながら私の声の高さから、そう判断されたのでしょう。
ただし、これは私が性別の判断を相手に委ねたから起こったことであり、もし「○年○組の〜の母ですが」と私が言えば、そのようなことは起こりません。電話の相手が私のことを母、つまり女性だと思って声を聞くならば、多少声が低かろうと、女性の声と思って聞こうとする心理が働くのだと思います。
それでは、よい声でお過ごしください。