SRSで後悔しないために

みなさん、グーテンターク! サクラです。

今日はトランスジェンダーがSRSを受けるにあたり、後悔しないために考えたりあらかじめ解決しておくべきことを書きます。長いです。

これまでの日記で、私はSRSに対して肯定的な意見を言っていました。しかし世の中には「SRSを受けて後悔した」という話があるので、手放しに誰にでも推奨するような書きかたは良くないと思いました。

以下書きっぷりは少々厳し目かもしれません。あしからず。

実際のところ、トランスジェンダーにおいてSRSの生活に占める割合というのはそれほど大きくありません。ふだんの生活のなかで股間を人に見せて暮らす場面というのはそれほど多くないからです。(FtMの方にとっては胸の問題があると思いますが、ここでは主にMtFとしての見解と理解してください)

プリンアラモードで例えると、上にのっている赤いチェリーがSRSに相当すると理解して良いと思います。下の写真はWIKIから引っ張ってきたものですがプリンを中心としてチェリー以外にたくさんの美味しそうなものが乗っているのがわかります。

Pudding a la mode 2017 Hotel New Grand The Cafe 1.jpg
By Morio投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

写真の横浜のホテルニューグランドのオリジナルプリンアラモードを基準とするなら、チェリーは外すべきではないでしょう。この人工的な赤みがお皿全体を引き立たせています。

とはいえ、逆に言うとチェリーだけあればいいのではありません。プリンやホイップクリームや季節のフルーツなどがなければ、これもまたプリンアラモードとは言えません。

GID(性同一性障害)の解決方法としてSRS(性別適合手術)のみを求めるのはプリンアラモードにチェリーのみを求めるようなものです。その下にはチェリーを支える様々なものが乗っている必要があります。これは精神療法であったり、ホルモン療法であったりRLE(実生活体験)であったり、周囲の理解であったりするでしょう。

当然ながら精神療法を行い、ホルモン療法を行い、身体的にも多少の女性化が見られ、女性としての振る舞いや装いに慣れ、女性としての考え方や話し方を体得し、女性として人と関わり合うことが日常化して、初めてお皿全体の盛り合わせが完成し、上にチェリーを乗せることが出来るのです。

さてSRSの前に理解するべきことをおさらいしておきます。これらのことは治療の早い段階で理解し、覚悟しておく必要があります。

生殖機能を持つことはできない

SRSで作られる女性器は形成手術により作られるもので、あくまで形のみ近似的に作られるということを理解する必要があります。当然妊娠はできませんし、男性と残りの生をともにするとしても、どこかで生殖機能がない、不妊であることは話し合う必要が出てくるでしょう。

形成外科手術はもともと第一次世界大戦で当時の想像を絶する大量の火薬が使われ、顔面や身体を著しく損傷した人が戦後の社会で普通に暮らせるために発達したものです。目を失った人は義眼によって外見を取り戻すことはできますが、視力を取り戻すことはできません。とはいえ、このような施術により彼らは日常的に好奇心の目を向けられることなく生活できるように、つまりパスできるようになったわけです。

MtFも同様に女性としての肝心な生殖機能が失われているため日常的なパスが主目的になります。膣を作るかどうかはどれくらい親密な相手に対してパスするのかの違いであるだけで、どちらの選択でも子孫を残すことが出来ないことは同じです。

トランスジェンダーとトランスセクシュアル

もしかしたら将来的に生殖機能をともなう性転換の技術が生み出されるかもしれませんが、40代後半の私が、このさき利用できる機会はないでしょう。

もしいかなる方法を持ってでも自分の子供がほしいと思う方は、SRSの前によく考える必要があります。健康な男性の体であれば女性と生殖することにより子供を持つことができます。これは現在のSRSの後では全く不可能なことです。

子供が出来ることによって性自認が変わり、男性であることを受け入れるようになるかもしれません。私の場合逆に女性としての性自認はむしろ強くなりました。子供が出来ることで男性でいつづける理由が希薄となりましたし、その子供たちを自分の手で育てる必要があり育児のために女性化が追い風となったからです。

女性の性器と全く同等ではない

一度は男性器として発達した部分を手術するのですから、どんなに優れた形成術であっても自然発生した天然の女性器と全く同じになると期待は出来ないでしょう。これは外科医の技量により違いはあるにせよ、人間のやることなので、どこかで諦める覚悟は持っておくべきでしょう。

とはいえ、それほどの心配はいらないと思います。大浴場やプールなどを含めても、日常的にそばで他人の女性器をじろじろ観察されることもないでしょうから。

SRSに関係ない部分、特に骨格は男性のままである

ほとんどの場合SRSを行うのは十分に成長期を過ぎてからのことと思います。この場合、骨格は男性としての成長を終えているはずです。そして一度成長した骨格はホルモン治療でもSRSでも変わることはありません。男性の骨格であるからには、肩幅は広く、骨盤も小さく、手足の末端は大きめでしょう。

肩幅は肉付きによるところも大きいのでホルモンによる変化で筋肉が落ちると目立たなくなることはあります。同様にお尻のお肉もついて大きくなるのでこちらも女性的になってくるでしょう。なりゆきでOKとなるかもしれません。

身長も当然ながら変わることはありません。男性でも女性でも背の高さは共に意識の上に登りやすいため、背が高い方は注意が必要だと思います。私は168cmと男性としては中の低なのですが、同じ世代の女性の中にいると背が高く目立ってしまいます。なので私は高いヒールは普段履かないようにしています。ここぞというときには履くつもりですが。

また男性の頃にある程度体重があった人は、女性としては巨大に見えてしまうので、可能な限り痩せておいたほうがいいと思います。私もちょっと大きめだったので一日一食の習慣にして10kgほど体重を減らしました。これだけでパス度はぐんと上がります。

ダイエットの重要性

空腹の快感

過去の人々と断絶、または関係を更新する必要がある

SRSにかぎらずGIDの治療の過程において、親や家族を含め周囲の人との関係を再構築する必要があります。

私はまず当時の妻、次に実の母にカミングアウトをしました。詳細は省略しますが妻とは最終的に離婚しました。母はすぐに納得することはありませんでした。しかし私が自分の娘たち、母にとっての孫たちの世話を「男手一つで」しているのを見て態度は軟化しました。家族の間では時間が解決する部分はかなりあると思います。

次に友人ですが、私は基本的には断絶の方向で進めました。古い友だちを説得するより、現在の状態で友だちを作ることのほうが容易だと感じたこと、あとは古い友だちの多くは元妻とのつながりもあるため、離婚の一環で断絶が必要ということもありました。

話はそれますが、以前名前を変えた知り合いがいました。しかし周囲の人は彼を旧名で呼んでいたために、1,2年で結局元の名前に戻ってしまいました。そのとき私は「名前の変更をしたにもかかわらず旧名で呼び続ける人との関係を彼は断つべきだった」と思いました。彼はこれらの人たちとの交流を許してしまったことで、旧名を自分の身にまとってしまったのです。

変わって行く自分にもし周囲が適応できない、または適応しないようであれば、残念なことですが、断絶は必然となります。

可能であればタイミングを見計らって引っ越すのも良いと思います。私は大きな引越を2回しました。そのたびに環境を一新し、女性化に大きく踏み出すことができました。

女性の社会に慣れる必要がある

これはRLEのかなり中心部分ではないかと思います。女性として生活する以上、同性としての女性同士の交流は避けることができません。

私は子育てしている関係上、保育園や学校やスポーツクラブのママ同士の付き合いを常に要求されました。ママ同士のつながりは際限がないので、私は埋没する方針を固めて、カミングアウトしませんでした。聞いてきたら答えるつもりでしたが、聞かれることはありませんでした。いろいろ貴重な体験をしました。

女性の多くは、他愛もない話の中に深い洞察を持ち込み、深い情念と青空のような朗らかさを併せ持った、気のいい人だと私は思います。そのような人々に囲まれ、私自身その末席に名を連ね、同じ時間を過ごすのは、時々であれば非常に好ましいことに思えます。

手に職をつける必要がある

SRSをした、戸籍が女性になった、というタイミングで今までの収入源がなくなってしまうのは避けたいところです。現在就業しているのであれば、職場で先の見通しをたてておいたほうがよいでしょう。必要であれば男性であるうちに女性になっても働けそうなところに転職しておくのも手かもしれませんが、なかなか難しいものがあります。

自営業や技能職の世界では性的少数者の方もよく見かけます。そういう私もその1人です。美容や芸能に関する業界だとむしろ馴染みやすいかもしれません。

また探してみるとあまりこだわりなく人を採用している企業もあるようです。LGBTのカップルであれば以下のような求人も見つかりました。よく旅行に行くと使うモーテルです。参考まで。

https://www.hatagoya.co.jp/manager/http://www.hatagoya.co.jp/000_Honbu/job.htm

造膣をするかしないかを決めておく

膣を作るのはSRSの他の手術、つまり陰茎切除と睾丸切除、外陰部形成術と同時に行うべきもので、後から別手術で改めて膣を作るのはあまり実際的でないようです。このため造膣するか否かは前もって決めておく必要があります。

これについては人によってこだわりが出るところなので、安易にどちらにすべきと言えないと思います。

私は造膣はしませんでしたがこの選択で良かったと思います。メリットとして大体以下のような点が挙げられます。

  1. 手術内容が軽い(つまり執刀医の技術に左右されにくく、失敗が少ない)
  2. 費用が安い
  3. 回復が早い
  4. メンテナンスがあまり必要ない
  5. 下着が汚れない

また私の事情に起因する以下のようなことも判断材料となりました。

  1. 恋人がいないので膣の有無が問われる場面がない(必要であれば、事情を話して後ろの穴を使えば良いと思っている)
  2. すでに子供がいるので生殖活動に対して執着心が薄い
  3. 40代後半という年齢のためか、温泉など、膣に関係ない活動に興味がある
  4. 娘に相談したら不要ではないか、との反応があった

どちらにするにしても納得いくまで考え抜くのが良いと思います。

SRSを海外で受けるか国内で受けるか決める

海外、特にタイでの手術は国内より評判がよいようです。私は海外の検討をしたことがないので費用についてはよくわかりません。大抵の場合、コーディネイターのような人にお願いするようです。

海外でSRSを受けることについて気になるのは言葉の問題です。大体の場面で英語が通じるようですが、英語を全く理解しないまま海外へ行くというのはリスクを回避する上で憂慮するべきことと思います。いくらコーディネイターがいるとはいえ日常のすべての場面で面倒を見ることは不可能でしょうから、自分で現地の人とコミュニケーションを取る必要が出てくると思います。

全部おまかせで万事うまくいくと思っていたら、何かの手違いで想定と違うことになった、ということにならないためにも海外でのSRSを予定する方は早めに英会話や英文の読み書きができるよう、勉強に取り掛かると良いと思います。

私が国内一択だったのは、自分が未成年の子供のいる一人親であること、なにか問題が起こった場合に国内だとアフターケアが容易なことの2点が大きな理由です。実際費用も安かったと思いますし、短期間で済んだので仕事を休むことで被る損失も最小限に留められたと思います。

美容と健康に気を配る

女性として生きていくことを決めたのであれば、可能な限り美しくなるようにしましょう。タバコや飲酒は控え、適度なダイエットと適度な運動、良質な睡眠を心がけましょう。日焼けを避けて肌をきれいに保てば化粧も薄めでよくなります。

私が言うことじゃないとは思いますが、自分の肝に命じるために言わせてもらいました。

まとめ

生まれと違う性別で暮らすということは性の越境と言えるでしょう。もし生まれた国と違う国に移住するのであれば、移住をスムーズに行えること、移住先の生活で困らないようにすることを考え、失敗のない計画を立てることでしょう。

トランスジェンダーがSRSを受けると決めたのであれば、全身全霊をもってそれを遂行するようにしましょう。着の身着のまま亡命のように他国に逃れたのはいいけれど、見知らぬ地で立ち行かなくなることのないように、可能な限り備えておきましょう。実際治療の過程は時間がかかるものなので、じっくり準備すればそのことで心が落ち着くと思います。

最後に

小さい頃、私はボーイスカウトに所属していました。ボーイスカウトのモットーは以下のようなものです。

(独語)Allzeit bereit
(英語)Always prepared
(日本語)そなえよつねに

ボーイスカウト指導者のバーデン・パウエルの言葉です。このモットーについて以下のような説明がされています。

  • Be Prepared in Mind by having disciplined yourself to be obedient to every order, and also by having thought out beforehand any accident or situation that might occur, so that you know the right thing to do at the right moment, and are willing to do it.
  • Be Prepared in Body by making yourself strong and active and able to do the right thing at the right moment, and do it. 

ざっくり和訳しておきます。

  • 心でそなえること 自分自身を自制することによって如何なる指示に対しても従えるように、また起こりうるどんな出来事や状況についても前もって考慮しておくことによって、正しい時機に行うべき正しいことを知っておくように、そしてそれを望んですることができるように
  • 体でそなえること 自身を頑強に活動的にすることによって、そして正しいことを正しい時機に出来るようにし、それを行いなさい

つらつらと書いてきましたが、後悔しないために以上参考になればとおもいます。

ちなみにこのモットーはボーイスカウトだけでなく、ガールスカウトでも共有されています。

「SRSで後悔しないために」への4件の返信

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