SRSから4ヶ月経過

こんにちは、サクラです。

早いもので、私がSRSを受けてからもう4ヶ月が経ちました。

術部はほぼ回復したと言って良いでしょう。ただ体表から見て奥の部分ではまだ少し腫れている箇所があるようで、触るとしこりのようなものを感じます。

術後しばらくは陰部の表面の感覚が全くありませんでしたが、今はかなり感覚が戻ってきました。とはいえ以前のように陰茎があるわけではないので、術前とはまったく違う感覚です。今まで女性用ショーツを履くと陰茎のため前部は窮屈に感じていたのですが、今は体にぴったり沿っているので気になりません。というか気にならないということ自体が気になります。

とはいえ、これが通常の感覚として日常化すると、徐々にその新奇な印象は無くなっていきます。最近は生まれた頃からこうなっていたのではないかと錯覚することもあります。体の感覚というものは履歴を持たず常に現在に根付いているものと思います。

その一方で例えば夢の中では陰茎がある自分の夢を見ることもあります。術後に陰部が予想外に、つまり必要以上に回復して以前の陰茎とほぼ同じようなものが生えてきた、なんていう荒唐無稽な夢も見ました。トカゲの尻尾とかヒトデの触手ではないので、一度失ったらもう生えてくることはないはずですが、目覚めたときちょっとだけ心配になります。

体つきについては、骨格が変わらないわりには微妙な肉付きが変わったと思います。とても微妙ですが。筋肉は運動によって付くには付くのですが、男性のムキムキとした感じにはなりにくいです。

髪質はここ4ヶ月で生えたであろう根本から数センチのところを見てみると細く柔らかくなっているように思います。私は前髪の毛量が少ないので増えることを期待していたのですが、今の所は微増、目に見てわかるほどの変化なしといったところです。行く場所によってはウィグが必要なときがあります。

性自認についても変化がありました。今までは女性であるという性自認に対して、社会的に認められてないことから不安に思っていた面がありました。それが少しずつ減ってきました。というのも、今の私の体は男性の要件を満たさない一方で、多くの女性の要件を満たすようになったため、女性であることが当然のように思えてきたのです。下世話ですが陰茎の有る無しはこの要件に大きく作用することは間違いありません。

おそらく多くの女性は、自分の性自認を疑うことはないと思います。私も多かれ少なかれ、それに近くなったと思われます。もし「お前は女じゃないな」といわれても「ひどいなー」などと軽い気持ちで返せてしまいそうです。

ここ10年間の性の越境の時期に溜まっていった、どっちつかずの悶々としたわだかまりの多くが消えて行った気がします。お風呂の栓を抜くと、残り湯が流れ出ていきますが、お風呂の栓を陰茎に、残り湯をわだかまりと例えれば、この状況をうまく表現できそうです。それに代わり、心に根拠のない自信や自己肯定感が生まれてきました。実はここが一番大きなメリットである気がしています。

経済的な不安や子供たちと自分の将来についての不安は以前と同じように目の前に存在するのですが、なんとかなるだろうという気持ちが前より強くなった気がします。

上の娘からきくところによると、親しい友人には親がトランスジェンダーということを自慢しているそうです。私はむしろ今までこの理由で娘たちがいじめられるのではないかと常に心配していましたから、娘が自分の箔付けに使うとは思っても見ませんでした。

親が会社の社長とか、芸能人とか、作家や漫画家だとかで周囲から羨ましがられる人がいますが、親がトランスジェンダーというのも(おそらくある状況下で)同じ効能をもつことがあるようです。

SRSとその収支

こんにちは、サクラです。

今回はSRSとその費用について書きます。

私は国内の美容外科のクリニックで造膣なしのSRSを受けました。以前もお伝えしたように造膣なしの手術はありと比べて内容は軽く、費用も安いです。

以下のものは私の例ですので、クリニックや事前診断の結果、時期的な要因で変動がありうると思います。あくまで参考にとどめておいてください。

手術に関連するもの

事前に心電図を取るなど、諸事の出費も含め以下のようになります。

  • 手術料 800,000 + 消費税 64,000
  • 血液検査 10,260
  • 心電図検査 10,000
  • 心電図読影料 5,400
  • 診断書 10,800

ここまででおよそ90万円となります。

手術後の滞在時に必要なもの

クリニックから指示された持ち物を含みます。手術に必要なものは自分で用意することになります。

  • ヒールのないサンダル
  • ゆとりのあるワンピース数着
  • 生理用ショーツ数枚
  • ナプキン(多い日用)
  • 円座クッション
  • その他10日程度過ごすための日用品

値段はたいしたことないですし、もしすでに持っているものがあればそれで事足りるでしょう。

滞在費用

手術するクリニックは家から遠いので交通費がかかります。家族が見舞いに来たりしたので3万円程度かかったと思います。

手術当日と翌日は病院で過ごしますが、その後は近所のビジネスホテルに移動します。一泊朝食付きで5,000円程度でしたが、途中家族も来たりして10泊で6万円くらいかかったと思います。

朝食以外の食事は別途必要になります。手術後しばらくは動けないので、コンビニで買いためておいたものをつまんだりしていました。最終日に近くなると少し歩けるので、外で食事したりなどしました。水はたくさん飲むので買い置きしておきました。

他に本や服を買ったり、お土産を買ったりしましたが、SRSとあまり関係ないかもしれません。

生命保険の保険金

今まですべて出費の話でしたが、入ってくるお金の話をします。

平成30年度4月からSRSについて健康保険の対象になるというのがニュースになっていました。このため、通常の国民健康保険加入者であれば3割で受けられるようになっているようです。

しかしながらこの時点で手術が受けられる病院、つまり保険診療の基準を満たす病院は厚生労働省の発表によると全国で以下の3箇所だけとのことでした。

  • 岡山大学病院(岡山市)
  • 札幌医科大学病院(札幌市)
  • 山梨大学病院(山梨県中央市)

私は10年前に一度SRSを受けようとしていて、手術をする美容外科にすでに通っていて、今回そこでSRSを受けたわけです。しかし当時は娘たちがまだ小さく長期間は家を離れられないために、そのタイミングでのSRSは断念していました。いわば子供の問題が解決しさえすればすぐにでも手術を受けられる状態だったということです。実際10年あったので費用分の積立も並行して準備できました。

一方で、保険診療のためだけに、上記の3病院のいずれかで、初診から手術までの行程を踏むのは大変面倒でした。おそらく数回は通うことになるでしょうし、そのために仕事を休むとなると機会損失も発生し、時間もかかりメリットが無いように思えました。

手の届くものにお金をかけるかどうかの選択は、その人の財布の事情と価値観によるでしょう。結局、私は時間をお金で買いました。

これはあくまで私の事情ですので、今の時点で病院を決めていないのであれば上記のいずれかの病院に問い合わせても良いかもしれません。

さて保険診療を諦めた私は、自分の加入している生命保険で保険金支払の対象にならないか、担当の代理店に問い合わせました。ICD-10という国際基準の病気の分類があり、この分類の中に該当する疾病であれば保険金は下りるとのことでした。性同一性障害はF64というコードが割り振られており、保険給付金の対象になることがわかりました。

(ただし、ご自分で加入されている保険によって事情は変わることもありますので可能であれば現在加入している生命保険、医療保険の契約内容を事前に調べておいたほうが良いでしょう。)

私はクリニックに上記の出費とは別に7,000円払い、保険申請用の診断書を書いてもらいました。ドクターが忙しいとのことで出来上がるまで術後3ヶ月かかってしまいました。でも大抵の保険申請は発生から2年位は可能なので焦る必要はないと思います。

そしてこれを保険会社に申請すれば一週間ほどで返事が来ます。私に払われる保険金は以下のとおりでした。

  • 疾病入院保険金 2日
  • 疾病手術保険金 40倍

私の加入している保険の1日入院あたりの保険金が7,000円に設定していたので、入院2日で14,000円、手術料に対しては40倍で280,000円と計算します。合計294,000円が即日私の口座に振り込まれました。これは手術に関連する出費のおよそ3分の1です。

まとめ

大きい項目だけで考えると、差し引き70万ほどの出費となりました。これは娘二人と海外旅行に行くのと同じくらいでしょう。家族で旅行に行く代わりに、自分の性の越境のために使ったわけです。(次回は家族旅行に行くつもりです。)

とはいえ、上の娘はわざわざ見舞いにきて一緒に泊まってくれたり(ビジネスホテル滞在のため人数追加は容易でした)、友人と合流して食事をしたり、普段とは違う街で10日ほど過ごしたのはやっぱり一種の旅行と言えたかもしれません。

SRSで後悔しないために

みなさん、グーテンターク! サクラです。

今日はトランスジェンダーがSRSを受けるにあたり、後悔しないために考えたりあらかじめ解決しておくべきことを書きます。長いです。

これまでの日記で、私はSRSに対して肯定的な意見を言っていました。しかし世の中には「SRSを受けて後悔した」という話があるので、手放しに誰にでも推奨するような書きかたは良くないと思いました。

以下書きっぷりは少々厳し目かもしれません。あしからず。

実際のところ、トランスジェンダーにおいてSRSの生活に占める割合というのはそれほど大きくありません。ふだんの生活のなかで股間を人に見せて暮らす場面というのはそれほど多くないからです。(FtMの方にとっては胸の問題があると思いますが、ここでは主にMtFとしての見解と理解してください)

プリンアラモードで例えると、上にのっている赤いチェリーがSRSに相当すると理解して良いと思います。下の写真はWIKIから引っ張ってきたものですがプリンを中心としてチェリー以外にたくさんの美味しそうなものが乗っているのがわかります。

Pudding a la mode 2017 Hotel New Grand The Cafe 1.jpg
By Morio投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

写真の横浜のホテルニューグランドのオリジナルプリンアラモードを基準とするなら、チェリーは外すべきではないでしょう。この人工的な赤みがお皿全体を引き立たせています。

とはいえ、逆に言うとチェリーだけあればいいのではありません。プリンやホイップクリームや季節のフルーツなどがなければ、これもまたプリンアラモードとは言えません。

GID(性同一性障害)の解決方法としてSRS(性別適合手術)のみを求めるのはプリンアラモードにチェリーのみを求めるようなものです。その下にはチェリーを支える様々なものが乗っている必要があります。これは精神療法であったり、ホルモン療法であったりRLE(実生活体験)であったり、周囲の理解であったりするでしょう。

当然ながら精神療法を行い、ホルモン療法を行い、身体的にも多少の女性化が見られ、女性としての振る舞いや装いに慣れ、女性としての考え方や話し方を体得し、女性として人と関わり合うことが日常化して、初めてお皿全体の盛り合わせが完成し、上にチェリーを乗せることが出来るのです。

さてSRSの前に理解するべきことをおさらいしておきます。これらのことは治療の早い段階で理解し、覚悟しておく必要があります。

生殖機能を持つことはできない

SRSで作られる女性器は形成手術により作られるもので、あくまで形のみ近似的に作られるということを理解する必要があります。当然妊娠はできませんし、男性と残りの生をともにするとしても、どこかで生殖機能がない、不妊であることは話し合う必要が出てくるでしょう。

形成外科手術はもともと第一次世界大戦で当時の想像を絶する大量の火薬が使われ、顔面や身体を著しく損傷した人が戦後の社会で普通に暮らせるために発達したものです。目を失った人は義眼によって外見を取り戻すことはできますが、視力を取り戻すことはできません。とはいえ、このような施術により彼らは日常的に好奇心の目を向けられることなく生活できるように、つまりパスできるようになったわけです。

MtFも同様に女性としての肝心な生殖機能が失われているため日常的なパスが主目的になります。膣を作るかどうかはどれくらい親密な相手に対してパスするのかの違いであるだけで、どちらの選択でも子孫を残すことが出来ないことは同じです。

トランスジェンダーとトランスセクシュアル

もしかしたら将来的に生殖機能をともなう性転換の技術が生み出されるかもしれませんが、40代後半の私が、このさき利用できる機会はないでしょう。

もしいかなる方法を持ってでも自分の子供がほしいと思う方は、SRSの前によく考える必要があります。健康な男性の体であれば女性と生殖することにより子供を持つことができます。これは現在のSRSの後では全く不可能なことです。

子供が出来ることによって性自認が変わり、男性であることを受け入れるようになるかもしれません。私の場合逆に女性としての性自認はむしろ強くなりました。子供が出来ることで男性でいつづける理由が希薄となりましたし、その子供たちを自分の手で育てる必要があり育児のために女性化が追い風となったからです。

女性の性器と全く同等ではない

一度は男性器として発達した部分を手術するのですから、どんなに優れた形成術であっても自然発生した天然の女性器と全く同じになると期待は出来ないでしょう。これは外科医の技量により違いはあるにせよ、人間のやることなので、どこかで諦める覚悟は持っておくべきでしょう。

とはいえ、それほどの心配はいらないと思います。大浴場やプールなどを含めても、日常的にそばで他人の女性器をじろじろ観察されることもないでしょうから。

SRSに関係ない部分、特に骨格は男性のままである

ほとんどの場合SRSを行うのは十分に成長期を過ぎてからのことと思います。この場合、骨格は男性としての成長を終えているはずです。そして一度成長した骨格はホルモン治療でもSRSでも変わることはありません。男性の骨格であるからには、肩幅は広く、骨盤も小さく、手足の末端は大きめでしょう。

肩幅は肉付きによるところも大きいのでホルモンによる変化で筋肉が落ちると目立たなくなることはあります。同様にお尻のお肉もついて大きくなるのでこちらも女性的になってくるでしょう。なりゆきでOKとなるかもしれません。

身長も当然ながら変わることはありません。男性でも女性でも背の高さは共に意識の上に登りやすいため、背が高い方は注意が必要だと思います。私は168cmと男性としては中の低なのですが、同じ世代の女性の中にいると背が高く目立ってしまいます。なので私は高いヒールは普段履かないようにしています。ここぞというときには履くつもりですが。

また男性の頃にある程度体重があった人は、女性としては巨大に見えてしまうので、可能な限り痩せておいたほうがいいと思います。私もちょっと大きめだったので一日一食の習慣にして10kgほど体重を減らしました。これだけでパス度はぐんと上がります。

ダイエットの重要性

空腹の快感

過去の人々と断絶、または関係を更新する必要がある

SRSにかぎらずGIDの治療の過程において、親や家族を含め周囲の人との関係を再構築する必要があります。

私はまず当時の妻、次に実の母にカミングアウトをしました。詳細は省略しますが妻とは最終的に離婚しました。母はすぐに納得することはありませんでした。しかし私が自分の娘たち、母にとっての孫たちの世話を「男手一つで」しているのを見て態度は軟化しました。家族の間では時間が解決する部分はかなりあると思います。

次に友人ですが、私は基本的には断絶の方向で進めました。古い友だちを説得するより、現在の状態で友だちを作ることのほうが容易だと感じたこと、あとは古い友だちの多くは元妻とのつながりもあるため、離婚の一環で断絶が必要ということもありました。

話はそれますが、以前名前を変えた知り合いがいました。しかし周囲の人は彼を旧名で呼んでいたために、1,2年で結局元の名前に戻ってしまいました。そのとき私は「名前の変更をしたにもかかわらず旧名で呼び続ける人との関係を彼は断つべきだった」と思いました。彼はこれらの人たちとの交流を許してしまったことで、旧名を自分の身にまとってしまったのです。

変わって行く自分にもし周囲が適応できない、または適応しないようであれば、残念なことですが、断絶は必然となります。

可能であればタイミングを見計らって引っ越すのも良いと思います。私は大きな引越を2回しました。そのたびに環境を一新し、女性化に大きく踏み出すことができました。

女性の社会に慣れる必要がある

これはRLEのかなり中心部分ではないかと思います。女性として生活する以上、同性としての女性同士の交流は避けることができません。

私は子育てしている関係上、保育園や学校やスポーツクラブのママ同士の付き合いを常に要求されました。ママ同士のつながりは際限がないので、私は埋没する方針を固めて、カミングアウトしませんでした。聞いてきたら答えるつもりでしたが、聞かれることはありませんでした。いろいろ貴重な体験をしました。

女性の多くは、他愛もない話の中に深い洞察を持ち込み、深い情念と青空のような朗らかさを併せ持った、気のいい人だと私は思います。そのような人々に囲まれ、私自身その末席に名を連ね、同じ時間を過ごすのは、時々であれば非常に好ましいことに思えます。

手に職をつける必要がある

SRSをした、戸籍が女性になった、というタイミングで今までの収入源がなくなってしまうのは避けたいところです。現在就業しているのであれば、職場で先の見通しをたてておいたほうがよいでしょう。必要であれば男性であるうちに女性になっても働けそうなところに転職しておくのも手かもしれませんが、なかなか難しいものがあります。

自営業や技能職の世界では性的少数者の方もよく見かけます。そういう私もその1人です。美容や芸能に関する業界だとむしろ馴染みやすいかもしれません。

また探してみるとあまりこだわりなく人を採用している企業もあるようです。LGBTのカップルであれば以下のような求人も見つかりました。よく旅行に行くと使うモーテルです。参考まで。

https://www.hatagoya.co.jp/manager/http://www.hatagoya.co.jp/000_Honbu/job.htm

造膣をするかしないかを決めておく

膣を作るのはSRSの他の手術、つまり陰茎切除と睾丸切除、外陰部形成術と同時に行うべきもので、後から別手術で改めて膣を作るのはあまり実際的でないようです。このため造膣するか否かは前もって決めておく必要があります。

これについては人によってこだわりが出るところなので、安易にどちらにすべきと言えないと思います。

私は造膣はしませんでしたがこの選択で良かったと思います。メリットとして大体以下のような点が挙げられます。

  1. 手術内容が軽い(つまり執刀医の技術に左右されにくく、失敗が少ない)
  2. 費用が安い
  3. 回復が早い
  4. メンテナンスがあまり必要ない
  5. 下着が汚れない

また私の事情に起因する以下のようなことも判断材料となりました。

  1. 恋人がいないので膣の有無が問われる場面がない(必要であれば、事情を話して後ろの穴を使えば良いと思っている)
  2. すでに子供がいるので生殖活動に対して執着心が薄い
  3. 40代後半という年齢のためか、温泉など、膣に関係ない活動に興味がある
  4. 娘に相談したら不要ではないか、との反応があった

どちらにするにしても納得いくまで考え抜くのが良いと思います。

SRSを海外で受けるか国内で受けるか決める

海外、特にタイでの手術は国内より評判がよいようです。私は海外の検討をしたことがないので費用についてはよくわかりません。大抵の場合、コーディネイターのような人にお願いするようです。

海外でSRSを受けることについて気になるのは言葉の問題です。大体の場面で英語が通じるようですが、英語を全く理解しないまま海外へ行くというのはリスクを回避する上で憂慮するべきことと思います。いくらコーディネイターがいるとはいえ日常のすべての場面で面倒を見ることは不可能でしょうから、自分で現地の人とコミュニケーションを取る必要が出てくると思います。

全部おまかせで万事うまくいくと思っていたら、何かの手違いで想定と違うことになった、ということにならないためにも海外でのSRSを予定する方は早めに英会話や英文の読み書きができるよう、勉強に取り掛かると良いと思います。

私が国内一択だったのは、自分が未成年の子供のいる一人親であること、なにか問題が起こった場合に国内だとアフターケアが容易なことの2点が大きな理由です。実際費用も安かったと思いますし、短期間で済んだので仕事を休むことで被る損失も最小限に留められたと思います。

美容と健康に気を配る

女性として生きていくことを決めたのであれば、可能な限り美しくなるようにしましょう。タバコや飲酒は控え、適度なダイエットと適度な運動、良質な睡眠を心がけましょう。日焼けを避けて肌をきれいに保てば化粧も薄めでよくなります。

私が言うことじゃないとは思いますが、自分の肝に命じるために言わせてもらいました。

まとめ

生まれと違う性別で暮らすということは性の越境と言えるでしょう。もし生まれた国と違う国に移住するのであれば、移住をスムーズに行えること、移住先の生活で困らないようにすることを考え、失敗のない計画を立てることでしょう。

トランスジェンダーがSRSを受けると決めたのであれば、全身全霊をもってそれを遂行するようにしましょう。着の身着のまま亡命のように他国に逃れたのはいいけれど、見知らぬ地で立ち行かなくなることのないように、可能な限り備えておきましょう。実際治療の過程は時間がかかるものなので、じっくり準備すればそのことで心が落ち着くと思います。

最後に

小さい頃、私はボーイスカウトに所属していました。ボーイスカウトのモットーは以下のようなものです。

(独語)Allzeit bereit
(英語)Always prepared
(日本語)そなえよつねに

ボーイスカウト指導者のバーデン・パウエルの言葉です。このモットーについて以下のような説明がされています。

  • Be Prepared in Mind by having disciplined yourself to be obedient to every order, and also by having thought out beforehand any accident or situation that might occur, so that you know the right thing to do at the right moment, and are willing to do it.
  • Be Prepared in Body by making yourself strong and active and able to do the right thing at the right moment, and do it. 

ざっくり和訳しておきます。

  • 心でそなえること 自分自身を自制することによって如何なる指示に対しても従えるように、また起こりうるどんな出来事や状況についても前もって考慮しておくことによって、正しい時機に行うべき正しいことを知っておくように、そしてそれを望んですることができるように
  • 体でそなえること 自身を頑強に活動的にすることによって、そして正しいことを正しい時機に出来るようにし、それを行いなさい

つらつらと書いてきましたが、後悔しないために以上参考になればとおもいます。

ちなみにこのモットーはボーイスカウトだけでなく、ガールスカウトでも共有されています。

赤い靴はいてた男の子

こんにちは、サクラです。

トランスジェンダーにとっては陳腐なものが斬新に、斬新なものが陳腐に思えることがあります。歌い古された童謡によって胸が打たれるような深い感情がもたらされることが時にはあります。

童謡『赤い靴』は大正時代の詩人野口雨情によって作詞されました。歌われている女の子には実在のモデルがいたなどの言説があるようですが、ここではそれに触れず、トランスジェンダー的視点から読み解きたいと思います。

赤い靴はいてた女の子 異人さんにつれられて行っちゃった

「赤い靴」を履いていた「女の子」は歌い手にとって身近な人と思われます。しかしあるとき外国人に連れて行かれてしまいました。養子縁組とだろうと推測できますが、なにかのメタファーとも考えられます。私はこの女の子をトランスジェンダーのMtFと見立てます。

「異人」というのは「通常と異なる生まれの人」「異なる認識を持つ人」と解釈できます。トランスジェンダー的に言えば「異なる性自認」の象徴とも言えるでしょう。身近な人がある日突然、通常と異なる性自認に取り憑かれ、あるいは本来の性自認に目覚めて、変貌していった様子が歌われています。もしかしたらこの女の子はもとから異人であったと解釈することもできるかもしれません。

「赤い靴」は変貌する前から履いていたようですが、わざわざ彼女のことを「赤い靴」で特徴づけているのは、そこに彼女の独自性を歌い手が感じ取っていたからでしょう。歌い手はそこから予兆として今回の変貌を察知していた可能性があります。

横浜の埠頭(はとば)から汽船(ふね)に乗って 異人さんにつれられて行っちゃった

飛行機のない時代の港は未知の世界への入り口でした。当然、港町横浜は異国情緒にあふれ、日常とは異なるいかなることでも起こりうるイメージがありました。女の子はここから未知の世界に旅立っていったのです。

「異人さんにつれられて行っちゃった」は1番とまったく同じリフレインです。大事なことなので二度言う必要があったのでしょう。身近な友人が突如変貌し未知の世界に旅立ってしまう、こんなことが歌い手の眼の前でおこり衝撃を受けたのでしょう。

横浜の埠頭はSRSつまり性別適合手術を実施するクリニック、汽船に乗ることはSRSを受けることを暗示しています。新たな性自認に従って歌い手からは離れた存在となった様子が歌われています。

今では青い目になっちゃって 異人さんのお国にいるんだろう

現代では瞳の虹彩の色を変える手術があるようですが、大正時代にはこういった手術もカラコンも当然ながら存在していませんでした。目の色が通常の日本人の栗色か黒から青になるというのはナンセンスだったでしょう。当然ながらこれもメタファーです。

SRSにより異人の体に変貌をとげ、異人の世界での生活に慣れていく様子が語られています。その国での風俗習慣に同化していき異人になるということは、歌い手の知っている女の子ではなくなってしまったということです。歌い手は彼女を失ってしまったもののそれでも憧憬を持ち続けているようです。

赤い靴見るたび考える 異人さんに逢うたび考える

3番まででトランスジェンダーの友人についての記述は完了します。この歌の秀逸なところはこの4番で歌い手自身の心の揺れ動きについて歌っているところです。

身近にいた人がある日突然変貌したことを目の当たりにして、では自分はどうなのかと問いただすシーンです。ただ思い出すだけなら「考える」とは言わないでしょう。周囲にトランスジェンダーがいる場合、通常の性自認で暮らしている人でさえふと「自分はどうなのか」と考えてしまうことがあると思います。

もしかしたら自分の中にも異人がいるのではないか、未知の世界に旅立つ将来があるのではないか、そういった可能性に一度は思いを馳せることがあるだろうと思います。

 

以上多少強引ではあるのですが、トランスジェンダーとしての物語として赤い靴を再構築してみました。

SRSから3ヶ月経過

ボンジュール、サクラです。

早いものでSRS、性別適合手術を受けてから3ヶ月が経ちました。一応ここまでの経過をまとめておきます。

今回の手術は外性器を女性器にするものですが、私は造膣つまり膣を造りませんでした。男女の性行為を行う部位を作らない点でデメリットといえますが、費用の面や体に負担をかけない点でメリットとも言えます。

SRS三種類の選択

実際のところSRSで仕事を休んだのは2週間10営業日で、3週目からは仕事に復帰できました。ただ正直なところ休めるのであれば3週間4週間休むのもよいかも知れません。

術後の痛みは少しずつ和らいできて、3ヶ月目にはほぼ日常の生活に支障がなくなりました。排尿も問題ありません。自転車に乗ったり、プールで泳いだり、登山をしたりが出来るようになりました。

睾丸がなくなったせいで、術前に比べて女性化が進みました。すごく微妙なのですが肩の筋肉や腰つき、髪の毛質、肌の白さといったささいな点に変化が見られます。

精神的にも変化がありました。男性器がなくなったことによって性自認が安定し、今まで中途半端だった気持ちがずいぶん整理できました。今までいろいろ隠そうとしていたことを隠さなくてもいいやって思うようになりました。積極的になれているというのでしょうか。体の変化よりこちらのほうがインパクトあるかもしれません。

体力が落ちるかとも心配していました。確かに筋肉は落ちましたが、精神的な変化として挙げた積極性のためか以前よりずっと元気な気がします。

性感は徐々に戻っています。ホルモンバランスが変わったせいか一時性感を含む身体感覚が不安定になりましたが、すぐに安定しました。感じ方は睾丸の有無でかなり違うと思います。ホルモンの注射は術前は週1回でしたが今は二週間に1回にしています。

このように、私にとっては万能の薬に優る効果があったSRSですが、万人にポジティブな効能があるとは言えないと思います。手術の前に充分にリアル・ライフ・エクスペリエンス(RLE)を積んでおきたいものです。自分の望む性で暮らす見通しを建てておくことは重要です。

女性としてパスすること

私は子育てや資金の算段など他の兼ね合いもあり、SRS前のRLEに10年間費やしています。あまりにも長すぎて当初の計画であったSRSのことを忘れそうになっていたくらいです(笑)。今年の年初に一年の計画を立てようとしたとき、ふとこのことを思い出して手術を受けた次第です。

私は子無し要件に引っかかっていてまだ女性の戸籍を持っていません。フリーで仕事をしているとはいえコンプライアンスの観点から男性で仕事をしています。そして男装してはいるものの時々女性扱いを受けることもあります。自分でもよくわからなくなっているのですから、周囲にわかれとういのも無理な注文です。この問題は下の子が成人して戸籍が変更できるようになる数年後にまた考えることにします。

いろいろ書きましたが3ヶ月も経過すると「術後」はもうそろそろ終わりではないかと思います。