autogynaephiliaについて

こんにちは、サクラです。

今日はギリシア語由来の見慣れぬ言葉について説明します。

autogynaephilia(英表記)またはautogynephilia(米表記)とはギリシア語由来のauto「自分」、gynae「女」、philia「愛すること」の複合語で、「自分が女性であることを愛すること」という意味になります。20世紀末に性科学者 Blanchardによって提唱され、男性が自分自身の肉体が女性である幻想を抱く状態のことを指します。適切な日本語訳はみつからず、オートガイネフィリアとカタカナ語はあるのですが、とりあえずアルファベット表記のままにしておきます。

これは性同一性障害 gender identity disorder、性別違和症候群 gender dyspholia とは別の文脈で語られていること、一人の性科学者の提唱内容にすぎないため定説でないこと、これらに対して注意が必要です。まずは以下の英文を読んでみましょう。

 As with fetishistic transvestism, autogynaephilia is a sexually driven phenomenon. While female clothing is the source of sexual excitement in fetishistic transvestism, in autogynaephilia it is the fantasy of having female bodily characteristics. The autogynaephile may differ from the transsexual in terms of primary gender identity. Whilst the (biologically male) transsexual may identify with the female gender, the autogynaephile may identify them selves as male, but be sexually excited by the fantasy of having female bodily attributes, such as larger breasts or female genitalia. There may be an overlap with fetishistic transvestism in that cross-dressing may be employed in order to support the self-directed sexual fantasy of having a female body. — TRANS by Dr Az Hakeem —

重要な単語は英単語のままでざっと訳します。

fetishistic transvestismと同様に、autogynaephilia は性的に駆られる現象である。 女性の服は fetishistic transvestism の性的興奮の源であるが、autogynaephiliaにおいてその源は女性の身体的特徴を持つという幻想に相当する。 autogynaephile(autogynaephiliaの男性)は、性自認が(生物学的性と)同一であるという点でトランスセクシュアルとは異なるであろう。 (生物学的に男性の)トランスセクシュアルは性自認を女性とする一方で、autogynaephile は性自認を男性としながら、大きな胸や女性器などの女性の身体属性を持つという幻想に性的に興奮するだろう。 女性の身体を持つという自己指向の性的幻想を支持するために、女装が採用されうるだろう点で、fetishistic transvestismと重複するだろう。

後半は助動詞 may が頻出している通り、定性的なものがないことがわかります。

transvestismとは「服装倒錯」と訳されますが一般に「異性装」全般を指します。fetishism「呪物崇拝」「物神崇拝」は一般的な日本語でフェティシズムとかフェチとかいわれていますが、崇拝する対象が女性のハイヒールのような特定のモノでなく、異性装のような行動である場合もあります。fetishisticはこの fetishismの形容詞で、fetishistic transvestismとは「性的興奮を得ることを目的とした異性装」という特別な概念を指します。autogynaephiliaは「性的興奮を得ることを目的とし身体の女性化幻想をつこと」を指し、fetishistic transvestismの一種あるいは重複する概念であるというのが英文の示すところとなります。

文中で指摘されているようにautogynaephileの性自認は男性であり生物学的性と一致している点で、性自認が女性で生物学的性と一致しないトランスジェンダー(≅トランスセクシャル)MtFと異なります。ただ厳密な線引は実際のところ難しいと思います。私も自分がトランスジェンダーの可能性を疑う前は性自認が男性で固定していたため、人生のある一時期にはautogynaephilia的であったとも言えるからです。

トランスジェンダーに移行する潜在性のないautogynaephileであっても、自分もトランスジェンダーなのではないかと信じてしまう可能性があります。「トランスジェンダー」が広く知られる概念となっているためです。精神科での診断をきちんとすれば、正しい状態が判明するはずですが、中にはautogynaephileであるのに正式な診断を回避してSRS(性別適合手術)まで受けてしまう場合があるようです。

性自認が男性であるautogynaephileが自分の男性器を失うと、自分の新しい女性器にも興味を失い、深刻なうつ症状に悩まされる可能性が高いと言われています。男性である性自認に立脚してのフェティシズムであったのに、その構図が根本から崩されてしまっているからです。世の中でSRSを受け後悔したという方の中にはこのようなケースがあるかもしれません。

SRSで後悔しないために

ちなみにautogynaephiliaの女性版はautoandrophilia(androは「男性」を意味する)と呼ばれていますが、実際に事例は多くないといわれています。

「autogynaephiliaについて」への2件の返信

  1. Blanchard の学説というのは、Wikipedia で見るかぎり、「身体の性、性自認、性的指向」を三変数として、それらの組み合わせで sexuality を分類する通説とはかなり違う視点で立てられている仮説のようですね。

    わたし自身は、自分はそれには含まれないと確信できたので SRS を受けることにしました。
    https://ameblo.jp/akemi-gid/entry-12359601459.html?frm=theme

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