Valete ! サクラです。
今日は検診に行った話をします。
正直なところ30代なかばまでは自分の健康についてあまり気にしたことがありませんでした。しかし、子育てするようになると自分があと何年間は健康であり続けなければならないと気づきます。下の娘が大学を出る頃までと考えると50代半ばまでは健康で働かなくてはならないことになります。
そして女性化が本格的に始まったのも30代なかばです。当時のわたしはその後の20年の自分のあり方を決めるに際して、今の私に至る道を選択したのでした。それは健康であり続け、子供とともに生活を営める道でした。
自分の住んでいる自治体からは毎年健康診断やがん検診の案内が送られてきます。しかし私は長いあいだそれを受けたことはありません。女性へ移行中である私にとって、それは多くの面倒なことの一つだったからです。男性か女性のどちらかであればできることが性の移行中の者にとっては不可能であったり、骨の折れることであったりすることは多々あります。私は幼虫から成虫に大きく変わる虫がなぜ蛹という活動をしない期間を持つのか理解できるような気がしています。
私は去年初めて検診に行きました。それはSRSを終えた私が、それまでの女性に移行する過程で失った世界を取り戻す一連の行為の一つでした。受付の方は私の性別欄と私の姿を見比べてから、女性更衣室の鍵を私に渡しました。その判断は、同じような状況の人がそれなりに来ていて対応に手慣れているのでは、と思わせるものでした。
不快な思いがなかったこともあって、今年も同様に検診に行きました。今回は一つ確認したいことがありました。それは「私が乳がん検診を受けられるか」ということです。
女性用トイレや銭湯やプールの更衣室など男性の目の届かないあらゆる場所で見られる2大広告といえば「DV被害の相談」と「乳がん検診のすすめ」でしょう。後者については大体こんな内容です。
乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍です。放置すると、がん細胞が増殖して乳腺の外へも広がっていきます。そして血管やリンパ管へ入って全身をめぐり、乳腺以外のさまざまな組織や臓器へ転移します。ここに乳がんの怖さがあります。
しかしその一方で、早期に治療を行えば約90%の方が治るといわれています。
乳がんから命を守るために、少しでも早く発見して治療を行うことがとても重要です。
胸がBカップを越えて大きくなってくると、こういう情報を見ていながら検診を受けてないことがなんだか恐ろしく感じるようになります。
今回検診に行くときに、私は胸が開いている服装ででかけました。受付で「性別は男性であるけれど胸があるので乳がん検診は受けられないか」と聞いたら「少し相談するのであとで受付によって欲しい」と言われました。
検診を終えて受付にいくと、豊胸手術で胸が大きくなっているわけではないことを確認された上で「男性に対しては保険での検診はできない」といわれました。そしてマンモグラフィーやエコーの検診のできる病院を紹介されました。しこりを感じるようであれば保険診療になるかもしれないが、そうでない限り基本的には自費診療になるとのことでした。自費だとマンモグラフィーは5000円くらい、エコーも合わせると1万円超えるくらいだそうです。
制度上このくらいが戸籍上の男性にできうる限度なのだろうと私は理解しました。男性の乳がん罹患率は女性の100分の1以下と言われています。とくに乳がん検診は必要ないであろうと考えられる男性のカテゴリに私が分類されている以上、仕方がありません。
お金を払えばいつでも検診が受けられるということがわかった時点でゆっくり考えることにしました。あるいは戸籍を女性に変更したら自動的に乳がん検診の案内が送られてくるでしょうから、特に異変を感じない限りはそれを待つのもありかもしれません。
戸籍が女性になると検診には乳がん検診の他に子宮頸がん検診も受けられるようになりますが、こちらは事情を話してお断りすることになるでしょう。私には子宮がないので検査のしようがありません。