サクラです。こんにちは。
これは私の主観的な体験なのですべての人がそうなのかはわかりません。私は男性ホルモンの影響下にあったときには大変な喧騒を感じていました。なぜそうなのかというとホルモン治療を初めたときそれが収まったことに気づいたからです。そしてSRSを終えた今、私はかつての喧騒から完全に解放されたようです。
この前大自然の動物の番組を何気なく見ていました。産卵中に争うサケのオスや、メスを巡って争うトナカイのオスを見て
「この動物たちの感じていることを自分もかつて体験した」
と思いました。私も人間のオスであって、ホルモンを含む内分泌系が人の意識にどのような影響を与えるかについて無知だったため、サケやトナカイのオスのように、闘争心に身を任せたことがあります。これは意識の奥底から湧き上がってくるような強い衝動で、怒りなど激しい感情に転化しやすいものです。
私はオスであったときにはより大きな声で話したり叫んでいました。より乱暴な振る舞いをしましたし、話す内容も攻撃的だったと思います。でもこういったことが自分の性格なのだと思っていました。でも子供もできて生殖活動のためにオスで居続ける必要がなくなると、ふと自分の粗暴な部分が自分のものではないという確信を持ちました。第二次性徴期に入る前の私はとてもおとなしいと常に誰からも言われていたのですから。
このまま粗暴な自分を放置しておくと娘たちにも危害があってもおかしくない気がしました。父親と娘が通常の親子とは異なる方法で仲良しになることはなんとしても避けたいと思いました。でもこの頃になると全てに自信がありませんでした。ここで私が取りうる方法は誰かメスを見つけツガイとなること、あるいはオスをやめることでした。
私は後者を選びました。もともとの性格もあったのでしょう、一度堰を切った水は全く違う方へと流れていきます。私は脱オス化、そしてメス化の道をひたすら進んでいきました。すると、かつて耳を塞ぎたくなるほどの喧騒は過ぎ去りました。
ときどき社会的地位のある男性がセックススキャンダルで糾弾される様子がニュースで伝えられます。なぜ地位もあり有徳とされる人物が野卑な行いをするのかニュースでは分析されることはあまりありません。それは悪行なのかもしれませんが、私は彼らに一種の親近感を持ってしまいます。それは大自然の動物番組に出てくるサケやトナカイのオスに抱く気持ちと同じ種類のものだと思います。彼らもまたオスの衝動に身を任せたのです。
[…] 過ぎ去った喧騒 […]