SRSから1年経過

ボンジョルノ、サクラです。

早いものでSRSから1年立ちました。一言でいうと、予想以上に多くの変化のあった一年でした。

そもそもこのブログを始めたのはSRS直後のことでした。SRSに至るまでにトランスジェンダーとして体験した様々なことを書き記しておきたいと思ったのがきっかけです。同じような状況にいる方にとって、参考になればと思ってはいるのですが、もしかしたらあまりに個人的すぎて参考になっていないかもしれません。

さて現在SRSから1年経過したということですがこの一年間を振り返ってみます。術前の私はSRSに対して、単に外性器変更とそれによる生活の変化くらいしか期待していませんでした。そもそも私の手術の動機は、今までの両性具有的な生活にケリをつけるということと、自分の性について迷うことなく温泉やプールを楽しみたいということくらいだったのでした。

しかし術後しばらくしてみると、どうも様子がおかしいことに気づきました。何人かの男性にとても強く惹かれるのです。当然それらの男性たちは人格的にも立派に思える人たちであるのですが、なんというか理屈ではなく有無をいわさない強い衝動を伴う惹かれ方です。夜の街灯に惹かれる虫とでもいうのでしょうか、そのような惹かれかたは術前にはありませんでした。

私はいろいろ考えた挙げ句、これは今回の手術による変化だと結論付けました。術前には男性の匂いにこれほど敏感ではありませんでしたし、無関心だったと思います。術前の私は男性ホルモンを定期的に分泌する睾丸の影響下にありました。外の男性に影響されないのは、自らの内なる男性による影響だったのです。

この外の男性への衝動が軽いものでしたら、うまくやり過ごして暮らすこともできたでしょう。あるとき、ある男性のことが頭から離れず、彼に対してとても強い想いに心が占領されてしまいました。女友達には思春期だと揶揄されましたが、あながち嘘では無いと思いました。

こうした想いも相手がこちらを向いていくれるのであれば成就され解消されるものだったのかもしれませんが、実際は違いました。相手の男性は私の方を向くことなく、私の片思いは成就されることはなく行き場を失ってしまったわけです。精神的に不安定になり、日常生活にも影響がでるようになると、なにか対策を取るべき事象だと認識するに至りました。

その対策として、私は男性と交際することを考えました。男性を好きになる自分を認めてあげることによって、また男性に対して自然に行動を取ることを許すことによって、精神的にずいぶん安定しました。このような心の動きに注意を払わなかった私にそもそも問題の原因があったと言えます。手術前にはこんなことがおこるとは予想もしていませんでした。おそらく両性具有的な当時の私は外部の男性も外部の女性も必要としていなかったからです。

性の違和感を感じだした初期のころは、女性である私の自我は心の中の本当に小さい点のようなものでした。しかし、一度それが力を得ることになると徐々にその勢力範囲を広げていきました。まず心の多くの部分を占領し、次に行動を規定し、さらにホルモン療法により体の内側を完全な支配下に置いた私の自我は、今度は体の表面を変更することを要求しました。これがSRSにつながるわけです。手術によってこの自我の拡張は止まると予想していた私は、見事に裏切られることになりました。

自我というのは自分個人だけで存在しえないもので、他人との関係があって成立するものです。体の表面を境に外側と内側で混じり合うことのない別な世界が存在すること自体が考えにくいことなわけです。術後一年間は、まずは体の回復の期間であり、さらにその外側へと広がる準備をする期間だったと言えます。

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