瓶に込められた言葉

サクラです。過去のバラけた自分の記録をまとめることは、このブログを初めた理由の一つです。

私がホルモン治療を初めたのは2006年5月でした。それ以前はもやもやした気持ちで暮していたと思います。実際当時の気持ちがどんなだったか自分で再現できなくなっています。

2006年2月の日記には周囲に理解者のいない孤独感とともに詩が書かれていました。自作ではありません。イギリスのロックバンドの歌詞を自分で日本語に訳したものです。なにか解決の緒を見つけようとしていた当時の自分の状況がわかるのではと思い以下に転記します。

「瓶に込められた言葉」

私は漂流者、誰にも知られていない島に流れ着いた。
次々と訪れる夜と昼、しかし私以外に誰もいない。
もしこれ以上の孤独があるとすれば、
これに耐えられる人はいるのだろうか?
絶望の底へ落ちる前に誰かに助けて欲しい。

私は世界に助けを求める、言葉を瓶に込めて。
だれかがこれを聞くことを私は希望する。

このようにして一年が過ぎた。
私は最初から知っておくべきであった、
希望だけが自分をつなぎとめておける
唯一のものだということを。
愛が大切だと人は言う。
だけど愛は自分を癒すこともするけど
ばらばらに打ち壊してしまうこともある。

今朝気の向くままに散歩をしていたら、
信じられない光景に出会った。
千億もの瓶が海岸に打ち上げられていたのだ。
どうやら孤独でいるのは私だけではないらしい。
千億の漂流者が家に帰りたがっているのだ。

私は世界に助けを求める、言葉を瓶に込めて。
だれかがこれを聞くことを私は希望する。

the Police / Message in a bottle

カードの手札

こんにちは、サクラです。このブログを書くきっかけとなった心境の変化について少しお話したいと思います。

SRS、性別適合手術を行うと患者は一般に精神的、社会的な生活で改善が見られると言われています。以下は英語のwikiからの引用です。

After sex reassignment surgery, transsexuals (people who underwent cross-sex hormone therapy and sex reassignment surgery) tend to be less gender dysphoric. They also normally function well both socially and psychologically. Anxiety, depression and hostility levels were lower after sex reassignment surgery.

ざっくり訳します。

SRS施術後、トランスセクシュアル(ホルモン療法とSRSを受けた人)は、性的不快感が少なくなる傾向があります。 彼らはまた、通常、社会的にも心理的にもうまく機能します。 SRS後の不安、うつ病、敵意のレベルは低いことがわかりました。

私が体験したSRS前後の心境の違いはダウトというトランプゲームで例えることができます。このゲームでは順番に数字のカードを伏せて場に出していきます。仮にその数字が自分の手札になくても、あたかも持っているようなふりをして嘘をつかなければなりません。他のプレーヤーがそのカードに疑いを持った場合、「ダウト(doubt = 疑問に思う)」を宣言してカードの真偽を確認することができます。もし数字が正しければダウトの宣言をした人が無実の人を疑ったことに対するペナルティを受けますが、もしそうでなかったらカードを出した人が嘘を語ったことに対するペナルティを受けます。

SRSをする前の私は男性の外性器を持ちつつ女性として暮していました。いわば嘘のカードを場に出したダウトのプレーヤーのような心境です。性的少数者への理解が進んだこともあり、日常生活でよっぽどのことがなければ他人の性別に対して「ダウト」の宣言をしてくる人はいないでしょう。それでもどこかで嘘を語る意識を持ち続けることは精神衛生上あまりよろしくありません。なのでウィッグを着用したり、化粧をしたり、女性らしい服装をしたりと必要以上に女性的に振る舞おうとしてダウトされるリスクを減らそうとするのは当然の反応でしょう。(それが裏目に出て不自然さを醸し出すこともありえます。)

ところがSRSを行ったあとでは状況が180度変わります。外性器は女性の見た目となりますのでカードは嘘でなくなります。自分の出すカードが要求された数字の通りであれば何も心配はいりません。「ダウトしたいんだったらしてみなさいよ」と強気に出れるのです。最悪の場合、裸にされてもそれでカードが正しいことが証明されるのなら、それはそれで構わない(もちろん避けたいですが)とさえ思います。

SRSによるこうした内面の変化が精神的、社会的生活の質に与える影響は計り知れないと私は思います。

SRSで失ったもの

こんにちは、サクラです。忘れそうなことは早めに書いておきたいと思います。

私が受けた性別適合手術はMtFの手術としては一番軽いものでした。手術の軽重を決める一番大きな違いは膣を作るか作らないかです。体の中に穴を開けてそれを保持するのですから負担が大きいわけです。手術後の回復もずいぶん違うので造膣をするのは覚悟と準備が必要だと思います。

私は造膣はしませんでした。今の私には恋人はいませんし、もし相手がいても事情を話して後ろの穴を使えばいいと思っています。今までもそうしていましたし。

また、そもそも私が女性の体になりたいと思ったのは温泉にのんびり入ったりプールに行ったりという性生活以外のことなので、造膣の優先度は低かったのです。

私が受けた手術の内容は以下の通りです。

  • 陰茎切除
  • 睾丸切除
  • 外陰部形成術

手術前にもらった説明書を抜書きします。説明書は造膣も含んだ記述になっています。

陰茎・睾丸を切除し、男性型外性器を小陰唇・陰核・膣などからなる女性型に近似する外性器を形成します。陰茎、睾丸を切除した後、尿道・前立腺と直腸の間に膣となるべきスペースを作成し、余剰の陰茎皮膚で小陰唇を形成します。陰核は亀頭の一部を使用して形成します。生殖能力(子供を作る能力)は完全に失われます。

最初に説明を受けたとき痛そうだなーと思いました。まあ実際に痛かったのですが、膣なしのためか思ったより楽に感じました。昔バイクでころんだときに肘のあたりをひどく擦って血だらけになったことがありますが、ちょうどそれと同じくらいだと思います。

ところで、脳の活動は高いレベルと低いレベルのものがありますが、普段意識しないような低いレベルで、脳は体の感覚を定期的にスキャンしているようです。術後に全身麻酔からさめてしばらくすると、脳が虚しい作業を繰り返していることに気づきました。脳が股間にあるべきもの、陰茎や睾丸のスキャンに失敗し処理を中断します。しばらくして再度スキャンするのですが失敗する、というのを何度も繰り返しているのです。

私は人の体ってよく出来てるなーと思いました。「脳くん、頑張っているみたいだけど、無駄な努力だよ。君の探しているものは永遠に失われてしまったよ」と私は自分の脳に言いました。でも彼(彼女?)は実直に決められた仕事を繰り返します。

2日程経って、失敗し続けていたこのスキャンは中止されました。とりあえず脳は諦めたようでした。一週間たった今、時々スキャンが走ることがありますが当然ながら失敗します。もっと時間が経つと、まったくやらなくなってしまうのでしょうか?

最初の投稿&子無し要件について

はじめまして、サクラといいます。

SRS(性別適合手術)を終わらせて一週間たったところです。術後しばらくは何もできなかったのですが、ようやく座れるようになりコンピューターに向かうことができました。ごろごろするだけというのも辛いものでした。

簡単に自己紹介しておきます。私は40代後半です。過去に性同一性障害(GID)の診断を受けました。MtF、つまり体が男性で心が女性というケースです。診断が出る前は、女性と結婚して娘を二人つくりました。いろいろ事情があり妻とは離婚して、子供たちは私の手元で育てています。GIDでSRSを済ませると一般的には戸籍の性別変更ができるのですが、私は未成年の子供がいるため保留です。

「子無し要件」と一般に言われているこの扱いは、性同一性障害者特例法の第三条「性別の取扱いの変更の審判」に書かれています。

  1. 二十歳以上であること。
  2. 現に婚姻をしていないこと。
  3. 現に未成年の子がいないこと。
  4. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
  5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

このうち上記の1と2はすでに満たしていたところに、今回SRSを済ませたことで4と5が追加されましたが、3だけは満たされていないのです。下の子が成人するまであと数年間、私の戸籍は男のままです。もう15年もこの件に関わっているので正直今の状態に慣れてしまっているのもあり、すぐに変えたいという気は起きていません。とはいえ、民法が改正されて成人年齢の引き下げが2022年4月に行われるとのことで思ったより早く変更できそうです。

今まで表向きに自分の性のことは語らなかったのですが、手術を経て心境の変化も体験しブログを書こうと思い立ちました。昔のことはさだかでないこともあるのですが自分のためにも一度まとめておきたいと思っています。更新はゆっくりだと予想されますがよろしくおねがいします。