こんにちは、サクラです。
表題の件について、自分でもよく違いがわからず使っているので自分のために一度整理してみます。(ここではGIDに関連するものを対象にしています)
1.字義どおりの解釈
まず単語のそもそもの意味を考えます。両方にあるtransという接頭辞はもとはラテン語の前置詞で「〜を越えて」「〜の反対側へ」「〜の彼方へ」という意味です。
sexualはsexに-(u)alという形容詞化語尾がついたものです。sexは「性別」の意味もありますが「性器」を指すこともあります。
genderは「性別」の意味も指しますがもっと広い「種別」の意味も持ちます。フランス語ではgenreと書きますがこれは音楽のジャンルとして日本語にもなっています。さらに遡るとラテン語のgenusあるいはギリシア語のγένος「生まれ」「由来」という単語にたどり着きます。ジーニアスとかゲノムとかジェネリックなんて言う言葉もこの単語と深い関係があります。
genderはまた文法の性を意味します。フランス語やドイツ語にはすべての名詞に性の違いがありますがこれは文法用語でジェンダーとよばれています。
以前はsexとgenderは等しく「性別」を指していました。しかし現代になって性別がそれほど簡単に二分できないことがわかってくると、sexは生物学的な性、genderは社会的な性役割という別の意味として使われるようになりました。
transgenderは字義通りには「社会的な性役割の反対側」、transsexualは「生物学的性の反対側」という意味になります。
2.Wikiの説明
ウィキではどんな説明があるか見ます。まずはトランスセクシュアルについて
Transsexual people experience a gender identity that is inconsistent with, or not culturally associated with, their assigned sex, and desire to permanently transition to the gender with which they identify, usually seeking medical assistance to help them align their body with their identified sex or gender.
ざっくり訳します。英語のsexもgenderも日本語に訳すと「性」になってしまうのでカタカナにしてあります。
トランスセクシュアルの人は、自らに割り当てられたセックスと一貫性をもてない、あるいはそのセックスと文化的に連携しない自己のジェンダーを体験し、自分と同一視するジェンダーに永続的に移行することを望んでいる。通常、彼らは自らの身体を同一視するセックスやジェンダーに沿うように医療援助を求めている。
次にトランスジェンダーについても同様に訳します。
Transgender people have a gender identity or gender expression that differs from their assigned sex. Transgender people are sometimes called transsexual if they desire medical assistance to transition from one sex to another.
トランスジェンダーの人々は、自らに割り当てられたセックスとは異なるセックスの識別またはその表現をしている。トランスジェンダーの人々は、あるセックスから別のセックスに移行する医療援助を望む場合、トランスセクシュアルと呼ばれることがある。
ここで注目することはトランスジェンダーのうち、ある特定の場合はトランスセクシュアルになる、とされている点です。もう一つこんな説明もありました。
Transsexual is generally considered a subset of transgender, but some transsexual people reject the label of transgender
トランセクシュアルは一般的にトランスジェンダーの部分集合と考えられている、しかしトランスセクシュアルの人のいくらかはトランスジェンダーのそのラベルづけを拒否している。
社会的に見た場合、日常生活で見かける人々は特に性器を露出しているわけではないのでセックスのレベルで性別を判断することはできず、あくまでジェンダーのレベルで判断していることになります。公共のトイレの男女別も本来はセックスの違いを意図した構造になっていますが、実際の運用ではジェンダーによって男女が分れています。
3.現代の人間界には存在しないもう一つの性別転換
私は今の自分について考えるときに自分がトランスジェンダーなのかトランセクシュアルなのか迷うことがあります。まあご飯が喉を通らないというほど深刻ではありませんが、それは次のようなことです。
現在言われているトランスセクシュアルというのは性器を本来望んでいた反対の性の見かけにすること、また、その新たに形成された性器を用いて性交ができるようになることだと言えるだろう。しかしクマノミの性転換Sex Changeはオスがメスになり生殖活動できるのに対し、トランスセクシュアルはできない。トランスセクシュアルが本当に反対性の生物学的性を獲得することだとすれば生殖ができないのは変ではないか?
実際SRSで行われているのは「性器のかたちを反対の性っぽくシミュレートすること」であって反対の性での生殖はできません。もし将来的に医学が発達して本当にその性として発生したような身体的生理的機能を獲得するような性転換ができるようになるとすれば、それこそが本当の意味でのトランスセクシュアルと言えると思います。
翻って考えると現在のSRSで実現しているトランスセクシュアルはトランスジェニタル transgenital(性器の性の反対側)というようなレトロニムになるのではないでしょうか? このトランスジェニタルというのは、分類のために考案した私の造語で、ジェニタルは生殖器の意味です。
ちなみにレトロニムとはある名前の指すモノから、それまでとは全く異なる新しいモノが発生したとき、区別のために既存のモノに後から付けられる名前のことです。例えばスマホが出てそれまでのケータイはガラケーと呼ばれるようになった、エレキ・ギターが出てそれまでのギターはアコースティック・ギターとよばれるようになったなどです。今現在ない技術が現れるとそれまで曖昧に使われている言葉は再命名される可能性が高いのです。
ただ、将来本当に生殖活動を伴う性転換が実現されるとすれば、それがどういう技術かはわかりませんが、現在のSRSという手法は廃れてしまうかも知れません。というのも、トランスセクシュアルの多くは潜在的に反対性での生殖活動を望んでいるのではないかと思われます。実現不可能であるから「生産的」でない状態に甘んじているだけと考えられます。
4.サクラのまとめ
まとめます。
- トランスジェンダー 実際の社会生活で自ら望む反対性として生きる人、何らかの医療支援をうけていることが考えられるがSRSによる性器の変更を行っているかは問われない。
- トランスジェニタル(現在のトランスセクシュアル)実際の社会生活で自ら望む反対性として生きる人、何らかの医療支援を受け、SRSによる性器の変更を行っている人。
- 性転換(字義通りのそして人間界では未実現のトランスセクシュアル) 実際の社会生活で自ら望む反対性として生きる人、生物学的に完全に反対性になっていてその性での生殖活動を行うことができる人、ただし現代の科学水準では実現できてない。
この分類でいくと、私は造膣を行っていないのでトランスジェンダーに近いトランスジェニタルに位置するのだろうなと思います。
もし完全に生殖能力を持つ反対性になれるのであれば、私はおそらく小学生のころに女性になる決定をしていただろうと思います。私がこれだけMtFをこじらせ40後半までひきずっているのは、まさにこの生殖機能を失ってしまうデメリットからでした。望まぬ性であっても子供を持つことができるのであれば、我慢してその性で生きていこう、このような生き方が私の半生を困難なものにしていたのだと思います。