ウィグよさらば

What’s up ? サクラです。

今回は、性別移行期に必須だったウィグから、完全に解脱した話をします。

ウィグというのは、平たく言うと頭にかぶるカツラのことです。ウィグの主な目的は、髪型の偽装です。ハゲや薄毛を隠すため、あるいは演劇で別な人物になりすますためといった形で利用されています。古代エジプトでは激しい日光を防ぐためであったり、宗教的な目的での利用もあったようです。

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By AnonymousGuillaume Blanchard, Juillet 2004, Fujifilm S6900., CC BY-SA 3.0, Link

私が性別移行期に頭髪をすべて覆うウィグ、フルウィグを使用していたことはすでに語りました。

髪の毛について

男性として扱われている職場以外のすべての場面で私はウィグを使っていたのです。

ウィグについてのファッション上の一番の問題としては、帽子がかぶれないことです。頭のかさが増えてしまうので大抵の帽子はきつくなります。無理にかぶったところで不格好ですし、頭が蒸れるのでかなり不快です。帽子をかぶって外出すると人前でそれを取ることもできません。というのも、ウィグも一緒に取ってしまうリスクは常につきまとうからです。また人工毛のウィグでそうだったのですが、ウィグの毛は何かにふれると乱れることが多く、帽子を取るたびに、毛並みを整えるため鏡が必要になります。自分のルックスを、自分でコントロールできないのは不安なものです。

また日常生活でも制限は出てきます。例えば自転車、それもクロスバイクのような速度の出る自転車に乗るときには、安全のためヘルメットをかぶりたいところですが、これもできません。できないとは言い切れないかもしれませんが、上に述べた帽子と似たような問題があるからです。これについては、ちょっと無理筋かもしれませんが「ウィグがヘルメットの代わりとなって頭を保護してくれてる」と考えることもできるかもしれません。

どんなに暑い日でも、髪の毛を縛ったりできません。ウィグと自毛の境目は不自然なので、その部分が露出するのは避けたいところです。

遊園地も鬼門です。ジェットコースターに乗るときに、ウィグをその場で外すわけにもいきませんので、かぶったまま乗ります。係の人が「帽子やメガネや装身具は飛ばされると危険なので外してください」という言いつけも、これについては無視することになります。ジェットコースターが疾走する間、ウィグの襟足を両手でずっと持っていれば、飛ばされることはありません。しかし、大空にウィグが舞ってしまうリスクを常に感じながら乗るアトラクションは、本来期待されるスリルとは別のスリルを味わうものとなります。

手入れも大変です。汗をかくと匂うので、専用のシャンプーリンスで洗浄する必要があります。またどんなに大事に扱っても、毛先の痛みは防ぎようがなく、わたしの場合、半年に一度の頻度で買い替えをしていました。私の愛用していたウィグはだいたい1万円台半ばくらいの金額でした。

ただこのような不便なことやデメリットを差し引いでも、ウィグは断然魅力的なものでした。私のおでこの生え際はM字型の男性的で後退気味だったので、ウィグをかぶってお化粧をすると、かなり女性らしくなったように感じられました。

SRSを受けると、この状況は一変します。公衆浴場やプールなど、私の新しい活動の場にウィグがそぐわないため、脱ウィグの必要が生じました。女性化が以前より進展し、髪の生え際が改善してきたことは脱ウィグにとって追い風となりました。

しかし、脱ウィグを阻む一番の障害となるのは心理的なものです。というのも、あまりにも長い期間、ウィグは私の髪の毛として機能していたため、それなしで暮らすことに一種の強迫観念が生じていたのです。セルフイメージがウィグとともに成立していたため、ウィグなしでは自己が保てなくなっていたと表現しても、決して大げさではありません。

SRSの一時期を除き、比較的長いこと休みを取っていなかったので、私は2週間ほど休みを取り、長女と旅行に行くことにしました。主目的は骨休めですが、隠れた目的として「脱ウィグ」を掲げての旅行でした。普段知っている場所での脱ウィグは心理的なハードルが高いのですが、知らないところで知らない人に囲まれて暮らすのであれば、ウィグなしの自分になれるだろうと考えたのです。そしてそれは、うまいこと機能しました。

確かに、ウィグありで面識のある人から見たウィグなしの私は、「なんだかわからないけど大幅に何かが変わった」という印象を与えるようです。しかし、これも一度きりのことなので、すぐに慣れてしまうようです。

娘たちが脱ウィグに前向きでいてくれたこともあり、旅行から戻る頃にはウィグなしが普通と思えるようになりました。近所付き合いは普段からあまりしていなかったので、近所で歩くのは平気でしたし、必要とあれば今は帽子もかぶれるのです。

次女は今年高校入学したばかりなので、中学時代のママ友とも付き合いがなくなったところでした。数人の親しいママ友には事情を話してウィグなしでお付き合いできるようになりました。

また私が通う学校はここ3ヶ月ほど夏休みとなっていてブランクがありました。先週久しぶりに、また脱ウィグでは初めて登校し、クラスメートの洗礼を受けてきたところです。「なにか印象変わったわね」と言われ、今までウィグだったことを告白した形です。でも人は、自分が思うほど気にはしていないものです。重要なのは今の自分が一番自然だと自分自身が思うことなのです。

自分の生活の主な場面での脱ウィグが完了したところで、私の長かったウィグ生活が終わったことになります。これは男性器がなくなったことと同じか、もしかしたらそれ以上に私の生活にインパクトを与えているかもしれません。

少し気になって、ネットで「かつら 供養」で調べるといくつか神社が出てきました。機会があればお参りに行こうと思います。

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