トランスジェンダーの子育て

こんにちは、サクラです。

今日はシングル・トランスジェンダーの子育てについてお話します。

片親の家庭というと、一般には母子家庭と父子家庭のどちらかとなります。しかし我が家は、私がトランスジェンダーであることから、どちらかであるかは状況により変わります。

私が戸籍上男性である以上、行政の取り扱いは父子家庭なのですが、子育てや教育の場には私が母親として関わるため、母子家庭として扱われます。父親が子育てに未だ関わらない(関われない)家庭も多いので、父親が忙しい一般家庭と見分けつかないかもしれません。

役所や学校の届け出書類には「続柄」を記入するものがあります。子供本人にとって私がどういう関係にあるのかをかくのですが、私は状況に応じて「父」、「母」、「親」と使い分けます。

納税などに関わる役所の届けについては「父」と書きます。関係者は私の見かけよりも住民票や戸籍と一致してことが求められるからです。

同じ役所でも児童福祉関係の課では、我が家が父子家庭であることがわかると困惑されることがあります。市区町村によっては母子家庭と父子家庭での施策が違うため、「母親のような姿の父」が現れると「母親の対応」から「父親の対応」に切り替えなければならないからです。10年ほど前は、母子家庭のほうが父子家庭より手厚いことが多かった印象です。現在ではこの違いも縮小されているのでしょうか。

一方で子育てや教育の場では「母」と書きます。例えば学校に提出する緊急時の子供の引取りカードには「母」と書きます。「父」と書いてしまうと学校側は男性が来ると当然ながら期待しますが、私が女性として出向くと引き取り手の確認が困難になります。緊急時での面倒な判断は、できる限り排除されるべきです。この場合、生物学的性、あるいは戸籍上の性よりも、見かけの性が優先されます。

特に「父」や「母」と書く必要がない場合には「親」とだけ書きます。つまり「父か母のいずれか一人」という表現をすることが私にとって不快でない表現に思えます。とはいえ、役所や学校では私の名前が女性名であることから、書式に合わせるため適宜「母」と書き換えているようでした。

英語で両親のことを parents と言いますが、これは複数形です。単数形の a parentがこの「親」にあたる表現だと思います。一方、文法に男性女性を持つフランス語では un parent「男親」と une parente「女親」とで二分されてしまいます。とはいえ une mère「母」とは異なり une parenteは「生物学的に父であるか母であるかは考慮しない上での女親」との意味であると理解できるので、これは自分のことをうまく表現できているなと思います。

子供を介した親の集まり、いわゆるママ友の集まりでは一般に私は「母」として通します。ごく親しい人には私のトランスジェンダーである事情を話すことはありますが、通常打ち明けることはありません。お母さんたちのなかには、トランスジェンダーと潜在的な性犯罪者を混同して考えている人もいるからです。

これはかなり稀なケースだとは思いますが、多かれ少なかれ性についての誤解が一度発生すると、その解消はとても面倒なものです。周囲に無理な理解を求めるよりは、思考停止の状態でいてもらうほうが、子どもたちにとって望ましい、と私は考えています。

さて今年、下の娘が高校に入学しました。授業料無償化の関係で学校に届け出をするのですが、納税の記録を参照するため、マイナンバーのコピーか、課税証明書を添付する必要がありました。おそらく多くの家庭ではマイナンバーによる届け出となっていたでしょう。というのも、そちらのほうが手続きが少なく、一度提出すれば3年間有効だからです。

でも私は課税証明書で毎年届け出ることにしました。それはマイナンバーには戸籍上の性が記載されているからです。学校の諸届けでは私は女性としてしまっているので、これで問題になるかどうかはわかりませんが、矛盾をきたすような書類の提出は避けたかったのです。

このような複雑な状況に私があるのも性同一性障害特例法の「性別の取扱いの変更の審判」に「現に未成年の子がいないこと」というのがあるためです。私にとっては、むしろ「現に未成年の子がいること」のために戸籍変更したいところなのですが、世の中ではこの要件が必要とされる状況があるのかもしれません。

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このように、通常のシスジェンダーの一人親家庭(母子家庭や父子家庭)より、トランスジェンダーの一人親家庭は、各所で考慮が必要です。しかし、私はもう慣れてしまい、あまり苦には思いません。親のジェンダーに関わらず、一人親家庭は一般的にいろいろ大変です。また言ってしまえば、そもそも子を持つ親は、一人親であろうが両親そろっていようが、子育て全般で様々な苦労をしているものです。

一方で、トランスジェンダーで子供を設けたり、育てたり出来るのは稀なことだと思います。いろいろな巡り合わせが私にこれを可能にさせたわけで、これを私は恵みであると考えています。

下の娘が成人となるのは2022年4月です。2022年4月に成人を20歳から18歳に引き下げる法律が施行され、その前年に18歳になっている下の娘が、その時18歳19歳である人々と同時に成人になります。これにより性別変更のすべての要件が満たされることになり、少々の手続きを経て私は戸籍上でも女性となります。そして、子育ての大半がこの時点で完了していることになりますが、我が家はこの時をもって母子家庭となります。

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