サクラです。こんにちは。
おそらく多くの既婚女性は結婚を期に姓を変更していると思います。役所、銀行、クレジット会社など影響が広く変更が行き渡るのに半年はかかるでしょう。
私は名を変更しました。名字ではなく下の名前のほうです。2009年12月のことでした。ホルモン療法開始から3年半、性同一性障害の診断をされてから2年経過したころです。通常はSRSを済ませたときに性別の変更と合わせてするケースが多いようです。しかし子無し要件を満たさない私はSRSの施術をしたとしても戸籍の性別を変えることはできませんでした。しかしホルモン療法が進み実経験(RLE)も少しずつ進んでいるのに名前がそのままというのもだんだん都合が悪くなってきたのです。
「ひかる」とか「ちひろ」のような中性的な名前の友人がいて羨ましく思いました。こういう名前だったら変更する必要はなかったかもしれません。しかし私の旧名は人に教えると「男らしい名前だねー」と褒められることが多い名前だったのです。親はもちろん良かれと思って命名したに違いありませんが裏目に出てしまいました。
申し立ては管轄の家庭裁判所で行います。必要なものは以下のものです。
- 申立書 家庭裁判所にあるものを記入
- 収入印紙と郵便切手
- 現在の戸籍謄本
- 性同一性障害の診断書 担当の精神科の先生にお願いする
- 少なくとも一年以上変更したい名前を使っていた証拠
最後の「証拠」については少し説明がいるかも知れません。公的な書類を変更することはできませんが通称として使用していた形跡があればいいのです。例えば友人から来た手紙やメンバーカード、講座の受講票、名刺、領収書、納品書、自費で通った医院の診察券など、なるべく古い時期からなるべく多くの種類があるほうと有利です。私は変更したい名前で検定を取ったりもしました。検定合格証はたいてい立派な体裁なので心強いものです。
家庭裁判所にこれら一式そろえて提出すると審判期日通知書という書類が送られてきます。提出日の3週間後の日でした。私は女性の服装で9歳になる長女を連れて出廷しました。
家事審判官(いわゆる裁判官)は年配の女性で私に変更の意思と現在の名に戻したくなる可能性がないことを確認しました。そしておもむろに長女のほうに尋ねました。
「お父さんが〇〇という名前になるのは知ってる?」
「はい、知ってます」
「それで平気ですか?」
「はい、大丈夫です」
長女は実にいい仕事をしました。そのあと名の変更が許可された審判書が届きました。
審判
本籍 ****
住所 ****
申立人 **** 昭和*年*月*日生
上記申立人からの名の変更許可申立事件について、当裁判所はその申立てを相当と認め、次のとおり審判する。
主文
申立人の名「**」を「**」と変更することを許可する
平成21年12月*日 **家庭裁判所**支部 家事審判官 ****
あとはこれを役所に持っていくだけです。ただ銀行やクレジット会社などの提出用のためにコピーは多めに取っておきます。こうして名前が女性で戸籍の性別が男性の変な生き物が誕生したのでした。
私は派遣や請負で仕事をしていますが、たいていの会社はコンプライアンスの影響で戸籍にあった性別で仕事をすることになります。正社員であれば女性で仕事させてほしいと強気に訴えることもできますが、私のような雇用形態ではできません。また両性具有的生活に適応してしまった私は特にこだわらなくてもいい気がしていました。なんにせよ快適であることが一番です。
このような場合男装して仕事をするのですが、職場の人はなんとも不思議な気分になるでしょう。最近ではハラスメントも意識されるので、そんな事聞いてくる人はいません。なにも聞かれなければなにも起こっていないのと同じです。
運転免許証には性別の記載がないので日常的にはこれが強力な身分証明書です。名の変更後、最初の書換のときには提出用のコピーを持っていきましたが、受付の人は書類と私自身と期限切れの免許証を見比べて「変わったねー」と感心していました。昔の免許のままの情報しかなかったら、お巡りさんも私を捕まえるのは難しいかもしれません。
母は相変わらず私を昔の名前で呼びます。でも彼女の孫たちとの会話の中では私の今の名前が使われます。女親って実に器用なものだと感心します。