サクラです。こんにちは。
今日は最初に女性ホルモンを摂取したときのことを書きます。ホルモンとは体のある部位に作用して特定の機能を発揮する生理物質全般をさします。名前の由来はギリシア語の動詞 ὁρμάω「動作させる」の分詞です。女性ホルモンには卵胞ホルモンと黄体ホルモンの二種類があり、私達が治療に使うのは前者です。卵胞ホルモン estrogenは内分泌系に作用し乳房の増大、体毛の減少、腰周りの脂肪が増えるなど女性らしい体つきになるように機能します。黄体ホルモンは子宮に作用し妊娠を助けますが、生物学的男性が摂取した場合その作用する対象の子宮がないため効果が認められるかはわかりません。
卵胞ホルモンと似た物質が大豆などの植物に含まれているとされています。私もホルモン治療を行う前には必死で豆乳やプエラリア・ミリフィカというサプリを取りましたが、実際にホルモン療法を行った後から考えると効果は限定的だと思います。これはあくまで生物学的男性の主観的な意見です。
私が最初に摂取したのはプレマリン錠0.625mgという錠剤でした。日記によると2006年5月19日のことでした。この日私は、河で例えるならば男性の岸から、それまで見ているだけだった女性の対岸に向けて船出したのでした。このとき私は「これでいいんだ」という自己肯定感を感じました。それはまるで砂漠に放置されていた乾いたスポンジが清涼な岩清水で満たされるような感覚でした。
のちに錠剤ではなく注射による療法に移行しますが、これはまた別に書きます。
ホルモン療法の一番の懸念点は血栓症でエコノミークラス症候群と同じようなものです。しかし、むしろこの副作用のことが気になり今までより体に気を使うようになりました。タバコもこのときにやめましたし食事にも気を使うようになりました。
時々内科で血液検査をしました。半年か1年に一度くらい。このとき通常の検査項目に加え以下のものを追加してもらいます。
- エストラジオール 女性ホルモン
- テストステロン 男性ホルモン
- d−ダイマー 血栓症のリスクを知る指標
頼めるのであれば検査に出すときに性別を「女性」としてもらいます。基準値が男性と女性で違うものもあるので内分泌系を女性化させている場合基準値も女性で見たほうがいいと思います。
最後に「ホルモン療法を一度始めると途中でやめられず一生それに依存し続けることになる」という意見もあります。でも今の日本に医者にかからず市販薬も飲まずに生きている人はおそらくいないでしょう。乳児が死ぬことなく育つのも予防接種のおかげです。年をとればなにかしらの医療サービスに世話になります。また美食、美容、ネット接続、豊かなライフスタイルなど一度始めて一生それに依存し続けることは山程あります。ホルモン療法は無数にある文明の恩恵の一つです。よく考えて始めるに越したことはありませんが、本人が惨めに感じているのであれば絶対にだめというものではないと思います。